2020.12.01

菅首相「温室効果ガス排出ゼロ」に難癖をつける感覚はズレてないか?

すでに125ヵ国もあるんですが…
夫馬 賢治 プロフィール

日本もかつては省エネ技術で世界一だったのに

実は日本もかつて同じことを経験している。日本の製造業は、1970年代のオイルショックの際に、省エネ技術を磨き、世界最高峰にまで登り詰めたことで知られている。資源リスクから身を守るには資源依存度を下げる必要があり、そのようなイノベーションを起こせた企業が強いと考えたことが、未来の競争力を培った。しかし、いつしか日本人は、そのような感覚を失い、危機を好機と捉え、イノベーションへとつなげていく感覚を失ってしまった。

 

欧米では、数十年後を見る非常に大局的な見地に立ち、長期的な経営をするスタイルが、リーマン・ショック後に開花している。2012年頃に、二酸化炭素排出量や水消費量、従業員のダイバーシティや働き方等で、2020年に達成する目標を掲げていた企業は、ユニリーバ、コカ・コーラ、ウォルマート、スターバックス、ネスレなどなど、挙げたらきりがないほど、有名なグローバル企業の名前がどんどん出てくる(この点も詳しくは『ESG思考』を読んでいただきたい)。

では、あらためて、今回のコロナ禍という危機では、どんな話題が浮上していたのだろうか。まず3月15日には、シティグループ、モルガン・スタンレー、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス、BNYメロン、ステート・ストリート、ウェルズ・ファーゴというアメリカ銀行大手8社が加盟している業界団体「Financial Services Forum」が、自主的に自社株買いを禁止し、手持現金を確保し、従業員の雇用維持、顧客に対するサービスの継続、中小企業への融資維持に回せるようにした。さらにこの団体は3月20日に、資金繰りに苦しくなった中小企業に対し、手数料免除、時間外サポート等の支援を提供することも発表した。

3月27日には、大手の機関投資家が多数集い、合計の運用資産が100兆ドル(約1京(けい)円)にのぼる「国連責任投資原則(PRI)」という団体から、機関投資家が実行すべきアクションが提唱された。内容は、短期的には感染や経営危機のリスクが高まっている企業への支援を、長期的には新型コロナを誕生させた気候変動と生物多様性への対応と、店舗閉鎖で影響を受けたアパレルや農業、資源のサプライチェーン上の労働者への支援をすべきというものだった。この提唱内容の検討では、PRIの内部SNSで議論がなされ、私もつぶさに状況を見ていたが、欧米の主要な投資家たちが本当に自発的にこれらの結論を導いていった。このタイミングで、機関投資家から、気候変動や労働者保護というメッセージが出る感覚を、日本のどのぐらいの方がお持ちだろうか。

関連記事