2020.12.01

菅首相「温室効果ガス排出ゼロ」に難癖をつける感覚はズレてないか?

すでに125ヵ国もあるんですが…
夫馬 賢治 プロフィール

日本人は「耐えしのげば未来がくる」と考える

では、コロナ後はどうだったか。まず「SDGs」は日本と同様だった。コロナ禍が始まると年始の関心は一気に急落し、9月頃にようやく年始の水準に戻った。しかし一方、ESGは3月に同じく急落したものの2019年の年末ほどの数値はおおむね維持し、6月には年始水準にまで回復。その後は2019年のレベルを大きく越え、SDGsとの差を広げていっている。なぜESGは海外ではこのようになるのだろうか。

実はESG投資の歴史を細かく調べていくと、海外では経済危機のタイミングで、投資家も事業会社も飛躍的にESGへの関心を伸ばしてきたことが見えてくる。『ESG思考』の中で詳述したので、ここでは割愛するが、欧米のグローバル企業がESGやサステナビリティ(持続可能性)というキーワードに傾斜していく大きなきっかけとなったのは、2008年のリーマン・ショックだった。

2008年9月15日、リーマンブラザーズ破綻。Photo by gettyimages
 

ちなみに、講演などでこの話をすると、毎回お決まりの次のような質問が返ってくる。「なぜ経済危機のタイミングでESGへの関心が高まるのか。むしろ逆ではないのか。経済危機のタイミングでは、自分のことに精一杯で、環境や社会にかまっている余裕なんてなくなるのが普通ではないのか」と。

このように考えるのが、日本人にとっては「普通」なのかもしれない。だが、もっとスケールの大きい視点で考える欧米人は、違うようにものごとをとらえる。それは、「経済危機でわれわれの利益は吹き飛んだ。今後のためには経済危機を引き起こした原因を解決しなければ、安心して未来は迎えられない」というものだ。この点は、経済危機を景気のサイクルととらえて「仕方がない。耐えしのげば未来がくる」と考えるか、経済危機を人為的な因果関係の産物ととらえて「未来は危うい。なんとか手を打たなければ」と考えるか、このまったく異なる思想に立脚している。

たとえば、世界最大の小売企業ウォルマートが、かつては悪名高き存在だったのが「サステナビリティ」の観点を重視し経営を大幅に変革させたきっかけとなったのは、2005年の巨大ハリケーン・カトリーナによる被害だった。それからウォルマートは気候変動対策に本腰を入れ、さらに従業員のエンプロイアビリティ(就職する力)にまで注力するようになった。非常に長期的な視座に立ち、未来のためのアクションを先んじて起こしていこうという「長期思考経営」が根付いていったのだ。

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