夫婦同姓の苦しみ Case01:パスポートの旧姓併記問題】

世界を見渡しても、夫婦同姓を強制する国は日本だけだ。そしてほとんどの場合、女性が姓を変えることになる。自分の姓を変えることの苦しみはさまざまで、夫婦同姓を当たり前と感じる人にはなかなか伝わらない。本連載では、さまざまなケースで苦しみを抱える女性や夫婦に話を聞き、その実態を伝えていきたい。

選択的夫婦別姓の議論がやっと臨時国会で行われるようになったが、11月17日の参院内閣委員会で山谷えり子参院議員が発したこの言葉が波紋を呼んでいる。

「私も通称『山谷』ですが、結婚して戸籍上は『小川』なんです。パスポートもマイナンバーカードも表記は『小川(山谷)えり子』で不便はないんです。不便があるという方もいるので、どこがどう不便かを通称使用拡大に向けて議論していけばいい」(※1)

山谷えり子議員自身には不便がないかもしれないが、パスポートで『小川(山谷)えり子』のように旧姓併記することで不便が生じている女性は少なくない。

都内在住の森田久美子さんもその一人だ。結婚して9年目。海外での仕事が多い職業についており、海外へ行く度にパスポートの旧姓併記でさまざまな苦労に見舞われているという。森田さんを苦しめる「4つの苦労」とは。

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苦労1: 会社の旧姓使用証明書

まず、パスポートに旧姓併記するためには勤務先が「旧姓使用証明書」を発行しなければいけない。代表者役職氏名とともに所属会社の社印又は雇用者の登録印が押印された証明書を指す。森田さんが勤務する会社は従業員が数千人もいる大企業だから、代表者役職氏名の入った社印をもらうには、まず社内申請が必須だった。数日間待った末にやっと申請が通った森田さんは、その証明書に社印を自ら押し、パスポートセンターへ赴いた。

写真はイメージです(以下同)〔PHOTO〕iStock

だが、森田さんはそこで驚きの質問を受けることになる。パスポートセンターの窓口担当者が「この社印は代表者が直接押したものですか?」と聞いてきたのだ。森田さんはびっくりし、「いえ、うちの会社では社長自らがこのような証明書にハンコを押さないので、私が押したんです」と思わず正直に答えてしまったそうだ。たちまち顔を曇らせた担当者は、奥に引っ込みひそひそと同僚と話し込むこと数十分。結局はこの証明書でよいと言われたらしい。

森田さんにとってこのエピソードは忘れられないものとなった。もし運悪く、「社長に直接ハンコをもらってください」と担当者に書類を突き返されていたらどうなっていただろう……と未だに想像してしまうからだ。