全絵描き必見!「美術解剖学」を知ると人体がリアルに描ける理由

骨格と筋がわかれば、キャラは動く
金井 裕也, からだとこころ編集部 プロフィール

からだの立体感、動きを生み出す「筋・骨・関節」

表面から見えるからだの輪郭や動きは、おもに筋肉(筋)骨(骨格)とによって作られています。漫然と見ていると気づきにくいのですが、筋肉や骨の特徴は、表面上にもしっかりと表れています。

は、私たちのからだを覆う皮膚のすぐ下にあります。細かいことをいえば、皮膚の中にも微小な筋はありますが(例えば、鳥肌を立てたり、体毛を動かしたりする立毛筋など)、からだを動かす代表的な筋は、皮膚を剥いだその内側にあります。

これらの筋は、伸びたり(伸展)縮んだり(収縮)して、骨を動かすことで、からだのさまざまな動きを生み出します。骨についていることから、骨格筋といわれます。ほとんどの筋は左右一対で、およそ650個あります。からだの表面に表れる隆起は、これらの筋の形が投影されています。筋が発達しているアスリートなどは、この隆起で生じる陰影が強く出るわけです。

骨格は、筋がついている土台で、200個以上あるが組み合わさってできています。下の図で、骨格(右)と体表のライン(左)とを見てみると、からだの基本的な輪郭やフォルムは骨格によるものであることがわかります。

また、体表上には骨の隆起がはっきりとわかる部分があり、医学的に重要なポイントとなっていますが、人体を描く場合も目印となります。

【イラスト】からだの表層、筋、骨格からだの表層、筋と骨(男性の例)。黄色の四角は体表上で触れる骨の隆起。拡大画像はこちら illustration by Y. Kanai

こうした骨格のうち、骨と骨の連結している部分が可動箇所である関節です。

関節は、いくつかの種類に分かれ、可動範囲や可動方向が決まっていています。個々の関節がどう動くか知っておくことは、からだの動きを理解することにつながります。

【イラスト】おもな関節おもな関節の模式図。拡大画像はこちら illustration by Y. Kanai

例えば、肩関節は「球関節」に分類され、可動範囲(可動域)が非常に広いので、腕を上下・前後・左右に大きく動かすことができます。しかし、同じ球関節の一種で、特に「臼状関節」とも分類される股関節は、関節のはまり込みが深くしっかりしているため、肩関節ほどの可動域がありません。

ご自身で実際に動かしながら確認していくと、関節の種類、可動方向・可動域と実際の動きとが理解しやすくなります。

筋は運動もするし、感情も表現する

しかし、肩関節は動きが大きい反面、連結部分が浅いので、肩関節が外れやすく、いわゆる「肩が外れる」というアクシデント、つまり脱臼を起こすことがあります。

そうした肩と腕の骨を結ぶ筋は、関節を動かすとともに、その安定性を高める働きも担っています。例えば、三角筋は肩の代表的な筋ですが、肩全体を大きく覆い、そのすじ(筋束)は一様でなく、様々な方向に走っていることが、それを示しています。

【イラスト】三角筋とその動き体表面で三角筋の隆起が見られるところに矢印をつけた(上)。肩や腕の動きには三角筋が働いていることがわかる(下)。拡大画像はこちら illustration by Y. Kanai

一方、筋の中には、皮膚につくものもあります。

代表的なものは顔の表情筋です。表情筋は、収縮すると顔の皮膚を引っ張ってしわを作ります。このしわと、目や鼻、口などの開閉によって、喜怒哀楽の多彩な表情を作っているのです。

【イラスト】おもな表情筋どの筋がどのような表情なときに動くのかを意識すると理解しやすくなる。拡大画像はこちら illustration by Y. Kanai

例えば、笑った表情の時は、目尻がやや下がりぎみになって、口角がしっかりと上がります。口元に現れる表情は、口輪筋などの働きによります。それに対して、悲しみの表情のときは、目尻と口角が大きく下がります。下のイラストを見ると、「笑い」の目尻の下がり方とは違っていることがわかると思います。

【イラスト】笑い、悲しみの時の筋笑いの表情の時、悲しみの表情の時に筋がどう動くかを見る。拡大画像はこちら illustration by Y. Kanai

「表情」は「顔に表れる感情」といってよいでしょう。さまざまな表情はどれも、いくつもの表情筋の働きの組み合わせによって生まれます。表情筋は、目、鼻、口、額、眉間などいろいろな場所にあり、どんな表情のときにおもにどの筋が働いているのかを知っておくことは、繊細な感情表現に役立ちます。

【写真】能面女(左)と翁の能面。静謐な伝統表現による表情にも筋の存在が感じられる photos by getyimages

男・女を"らしく"表現するには、骨盤を攻略せよ

さきほど、からだの輪郭と骨格の関係について述べましたが、そのなかで腰まわりは、男性らしさ、女性らしさを印象付ける代表的な部位で、性差を表現する重要なポイントです。この腰の骨格が骨盤で、解剖学的には仙骨、寛骨(腸骨、恥骨、坐骨)という、いくつかの骨から構成されています。

では、この骨盤を中心に、男女でどうちがうのか、それがプロポーションにどう影響しているのかを見てみましょう。

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