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2020.12.06

本当に「頭がいい」とはどういうことか、池上彰さんから教わった

『なぜ、読解力が必要なのか?』後記
池上彰さんの新刊『社会に出るあなたに伝えたい なぜ、読解力が必要なのか?』を11月に出した。私は直接の担当編集者ではないけれど、企画段階からサポートする立場にあった。この本の白眉は、読解力を「論理的読解力」と「情緒的読解力」にわけて定義し、その二つを同時に備えることの大切さを熱を込めて説いたところだ。これは池上さんの卓見だと私は思う。その過程を少しご紹介したい。

日本人は読解力だけが悪いという調査結果

「日本人の読解力が落ちているらしい」というニュースをきっかけに、そのことに対する池上さんの考えを伺うことから、本書制作の取り組みが始まった。そのニュースとは、本書冒頭で取り上げたPISA(経済協力開発機構が実施する学習到達度調査)2018年の結果についてのものだ。2019年12月4日の新聞各紙が報じた記事の見出しには、「読解力、過去最低の15位」「国語力が危ない」など、大変ショッキングな言葉が並んだ。しかも、数学的リテラシー、科学的リテラシーについては世界トップ水準を保ったのに、読解力だけが悪かったというのだ。新型コロナウイルス騒動が始まる少し前のことだ。

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日本人の読解力がヤバい! そうだとしたら原因は何だろう? どうしたら読解力がつくのだろう? そもそも読解力は何の役に立つのだろう? 大学生からテレビの情報番組で接する芸能人まで、幅広く人間の読解力というものを知る立場にある池上さんなら、その答えを知っているはずだ。これが最初に考えた本の狙いだった。

そのとき私たち制作チームが漠然と前提にしていたのは、いわばロジカルシンキングとしての読解力だった。文章を正確に理解し、ものごとを正確に伝え、間違いのないコミュニケーションをとれる力だ。それが身につけば、職場でも家庭でも不幸な行き違いは起きないし、ネットで相手の書き込みを誤読した炎上も起こらないだろう。そのように考えていたのだ。