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習近平首席が初めて明かした「TPP加入への意欲」その狡猾な狙い

中国の対米「高等戦術」が見えてきた

APEC首脳会議の演説で

いまや完全な「政敵」と化しているドナルド・トランプ大統領の面前で、習近平主席が2日間にわたって、オンライン上に映った世界の首脳たちを前に、「中国が思い描く世界」について、持論をぶちまけた。

日本時間11月20日の夜遅く行われたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議と、翌21日の夜に行われたG20(主要国・地域)首脳会議でのことである。

「中南海」(北京の最高幹部の職住地)ではいま、「空白の2ヵ月半」ということが言われている。ライバルのアメリカが、事実上「無政府状態」のようになっている2ヵ月半――11月3日の大統領選挙から、来年1月20日にジョー・バイデン新大統領が就任するまでの期間――に、できるだけ世界に攻勢をかけようということだ。

換言すれば、「世界には中国というもう一つの選択肢もありますよ」と迫るものだ。

1発目は、APEC首脳会議。習近席は、画面上に映し出された21ヵ国・地域の首脳たちを前に、「手を携えてアジア太平洋の運命共同体を築こう」と題した演説を行った。その要旨は以下の通りで、はっきりと名指しはしないものの、多分にアメリカを意識した内容だった。

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「最近、世界とアジア太平洋は、大きな変革の真っ只中にあるが、新型コロナウイルスの爆発が、そうした趨勢の上を加速していった。世界経済は低迷期に陥り、経済のグローバル化は逆風に見舞われた。一国主義と保護主義が台頭し、公平と効率、成長と分配、技術と就業などの矛盾がさらに突出した。

貧富の格差は相変わらず、まんべんなく存在し、世界のコントロールシステムは、新たな挑戦に直面した。アジア太平洋地域は、過去数十年で初めて、マイナスの経済成長となった。人々の健康を保護しながら経済を復活させていくという、大変難しい責務を負わされたのだ。

そんな中、今年のAPECの重要な任務は、2020年の後の協力の原型を開いた。すなわち、アジア太平洋共同体という目標に達したのだ。

それは第一に、開放と包容性を堅持することだ。自由で開放された貿易と投資を実現することは、一気呵成になせるものではない。アジア太平洋地域は引き続き、先頭に立つ気構えで、平和と安定を決然と維持、保護し、多国間主義を固く死守し、開放型の世界経済の建設を堅持するのだ。それによって経済のグローバル化が促され、さらに開放、包容、恩恵、平衡、共勝の方向に発展していく。

われわれは継続して、地域の経済一体化を推進していかねばならない。アジア太平洋地域に早く自由貿易地域を建設するのだ。中国は、RCEP(地域的な包括的経済連携)が署名を終えたことを歓迎する。そして中国は今後、積極的にCPTPP(TPP11=環太平洋パートナーシップ協定)に全面加入すること考えていく。

第二に、イノベーションによる成長を堅持することだ。デジタル経済は世界の未来が発展していく方向であり、イノベーションはアジア太平洋経済を飛躍させる翼だ。われわれは全面的に、APECのインターネットとデジタル経済のロードマップを完成させ、新たな技術の伝播と運用を促進し、デジタルのインフラ建設を強化し、デジタルの垣根をなくしていくのだ。

 

中国が提唱したいのは、中国がデジタル技術によるウイルス防止と経済を回復させた経験を、各方面が享受できるよう推進していくことだ。ネット通販の環境改善を提唱し、市場の主体的な活力を刺激し、デジタル経済の潜在能力を開放し、アジア太平洋地域の経済の回復のために、新たな動力を注入していく。来年、中国は『デジタル貧困減少検討会』を主催し、デジタル技術の優位性を発揮し、アジア太平洋地域の貧困撲滅事業を助けていく。

第三に、互いの連絡と通信を堅持することだ。これらは地域の経済一体化の重要な基礎をなすものだ。中国はすでにインドネシア、韓国、シンガポールなどのAPECのメンバーと、コロナの期間に人を流動させる『エクスプレス・パス』を開通させており、引き続き人々が流動する利便化の道を築いていく。

われわれは、国際的なウイルス防止の健康情報を互いに認識し合えるよう進めていく。中国は各方面と手を携えて、アジア太平洋に互いの連絡・通信を進めるさらに大規模なプラットフォームを築くため、またアジア太平洋と世界の経済にさらに強力な動力を注入するため、質の高い『一帯一路』をともに作っていく。

第四に、協力と共勝を堅持することだ。アジア太平洋のメンバーの発展は、高度に相互依存しており、利益は深く融合している。APECはそもそもゼロサム和の挑発する場所、勝ち負けの政治プレイの場所ではない。そうではなくて、相互に成就し、互いに利益と勝ちをもたらす発展のプラットフォームだ。

われわれは協商を一致させるという基礎の上に、実務的な協力を推進し、矛盾と分岐をうまく処理し、アジア太平洋の協力を正確な方向に維持、保護し、APECを穏当に遠くまで進めていかねばならない。

ウイルスへの対応は、いま最も緊急の差し迫った任務だ。われわれはワクチンの研究開発と交流を強化し、ワクチンが世界全体の公共の産品となるよう努力し、ワクチンが発展途上国に速やかかつ安価に行き渡るよう促進していく。

中国はすでに『COVAXファシリティ』(ワクチン共同購入の枠組み)に加入した。中国はAPECの公共衛生の強化を支持し、中小零細企業などの分野での政策交流と能力作りを支持する。遠隔医療を提唱し、貧困や辺鄙な地域の人々に適宜行き渡るよう効果の高い医療を行い、ウイルス防止の協力と経済復興を助けていく。

今年、中国国民は、艱難辛苦と卓抜した努力を経て、ウイルス防止の戦いに重大な戦略的成果を得た。中国は各国と手を携えて協力し、困難をともに克服し、全世界のウイルス防止に知恵とパワーで貢献した。

中国はいささかも各方面に防止と治療の経験を惜しむことなく、他国と国際機関にできる援助を提供してきた。実際の行動によって、人類衛生健康共同体の構築に向けて行動してきたのだ」

 

以上であるが、なかなか考え抜いた文面である。注目すべきは、習近平主席自らが、初めてTPPへの加入に意欲を見せたことだ。

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