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習近平がテコ入れする「新法」で、中国は「尖閣の実効支配化」に乗り出す

「中国海警法」が示す、次の海上行動

「中国海警法」草案のインパクト

本年11月4日、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が「中国海警法(草案)」を発表し、公衆からの意見募集の手続きに入った。草案は11章、のべ80条からなる。全人代はこの1ヶ月間で社会の反応を確かめ、微修正を施した上で、同法を近々採択する見込みだ。

草案発表に際し、日本では即日、「中国が外国船に対する武器使用の法的根拠を作った」という部分に焦点を当てて報道が行われた。ただし、同様の規定は多くの国の法律に存在する。中国の場合、使用条件の緩さが特徴ではあるが、それだけでは珍しくない。むしろこの草案は、中国が今後どのような海上行動を準備しているのかという観点から、他の関連動向と照らし合わせて解読すべき重要文書である。

結論を先取りすれば、中国は新法成立後に尖閣諸島の実効支配化に乗り出す。来年度以降、尖閣諸島の周辺海域、特に接続水域では、中国の海上行動が新たな段階に突入して先鋭化し、年々強度が上がっていくと予想される。以下では、筆者がそう考える理由を説明していきたい。

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習近平の海洋リーダーシップ

まず全体の前提となるのは、海洋問題に対する習近平の統率力の強さである。彼の前任者の胡錦濤は「弱い指導者」で、弱小部門にすぎなかった国家海洋局が、国民の反日ナショナリズムを理由に対外的に暴走するのを許した(拙著『中国の行動原理』第6章)。これにより中国の海洋問題は一気に緊張し、外部環境は顕著に悪化した。その好例が2012年9月に、民主党の野田佳彦政権による尖閣「国有化」をめぐって起きた一連の騒動である。

同年11月に中国共産党総書記に就任した習近平は、こうした状況に強い危機感を持っていたと見られる。彼は中国の二大漁業省である福建省と浙江省で22年間勤務しており、もともと海洋問題への関心が高かったようだ。そこで習近平は、自分が問題の統率権を握ることで、中国の海洋行動を(彼の目から見て)一貫し、硬軟バランスのとれた、かつ効果的なものにしようとした。

国務院(総理:李克強)の傘下にあった国家海洋局の、さらに下部組織だった海上法執行組織・中国海警局は、2018年に国務院から切り離され、中央軍事委員会(主席:習近平)の指揮下に組み込まれた。しかも国家海洋局の残りは3組織に解体された。習近平は今日、中国の海洋行動を完全に統率している。