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カジノが日本をダメにする? ギャンブル好きの俺たちはそう思わない

【特別対談】赤松利市×黒川博行
東南アジアでのカジノコンプレックス開発を巡る新作『風致の島』を上梓した赤松利市氏と、カジノ好きで知られる黒川博行氏。ハードボイルドな初対談の「出目」はどうなった? (写真:森 清)
赤松利市氏(左)と黒川博行氏(右)

小説はまずキャラクターから

黒川 風致の島』は赤松利市が国際謀略小説に進出したと思って、面白かった。赤松さんの作品は根っこがしっかりしてる。それから記述が丁寧です。表現にバリエーションがある。俺にはできません。

赤松 いえいえ、よう言いますわ。

黒川 言葉も豊富やね。純文学の匂いがある。会話も地の文も説明やなくて描写になってる。けど、たとえば自然の描写がたくさんあるかというとそうやなくて、けっこう省略もされてます。そこは読者に想像してもらおうということやと思いました。

赤松 そうですね。ありがとうございます。

黒川 インドネシア、バリ島という地名を出さないで書いてるのも工夫やね。

赤松 ええ。誰が読んでもバリ島が舞台なんですが。

黒川 自分で書いてても、ここは実名を書きにくいなというのはあります。「アジアの虎」として出てくるのはユドヨノですか。

赤松 いえ、あれはスハルトなんです。

黒川 あっ、そうなんや。大昔の人間やね。俺はまだ存命のユドヨノやと思って読んでました。そこも名前を出さなかった。

赤松 そうなんです。ジンバラン地区の巨大開発のとき、実際に私はやられてるんです。スハルトの息子の会社を信用して200万円で買ったんです。

黒川 株ですか。

赤松 いえ、家を。でもスハルト政権自体がつぶれてしまったんで、今はただの野っ原になってます。

黒川 へえ、それが作品のモデルになってるんやな。それから、登場人物のキャラクターもみんな濃厚です。各人がこういう奴というのがものすごくはっきりしてて、同じようなキャラクターが一人もいません。キャラクター作りも赤松さんは最初から得意ですね。

赤松 いつもプロットを立てないで書いているので、まずキャラクターからなんです。

黒川 それは俺と一緒です。人間を書くんやからキャラクターが一番大切です。なぜそんなことをする人間になっているのかという経歴、履歴、そこをしっかり書く。赤松さんの作品はデビューから読んでるけど、そこはまったく変わりませんね。キャラクターは最初に何人ぐらい考えたのかな。

赤松 5、6人ですかね。

黒川 それらをバリ島に行かせようと。

赤松 そうですね。バリ島が舞台というのは決まってました。

黒川 でもこれが謀略小説になるとは思ってなかった?

赤松 思ってなかったです。

黒川 やっぱり俺と一緒(笑)。パズルのようなミステリーやったら破綻するけど、我々はハードボイルドやから。

赤松 ミステリーは私には書けません。

 

黒川 流れを決めるより、その場その場で考える方が面白くなるかもしれん。一冊を仕上げるまでにいろんな岐路があって。『風致の島』は、どういう結末にするのかが難しいと思いながら読んだけど、あの結末しかないかもしれません。

赤松 別の結末も考えはしたんですが。

黒川 あれで正解やと思います。

赤松 大藪春彦賞をいただいた『』も書きながら考えました。

黒川 』は主人公をゲイバーのママにしたのがよかった。ラストシーンもすごくよかった。『風致の島』もそうやけど、ラストに情感があるのがええね。