2020年度カンヌ国際映画祭の「オフィシャルセレクション2020」に選出された『本気のしるし 劇場版』が全国で上映中の深田晃司監督。先日、「ハラスメントの加害者と被害者を同じバランスで語るべきではない」の記事でハラスメント問題について率直に語ってくれた深田監督は、インディペンデント映画界をサポートする様々な活動をしている。

『本気のしるし』より

最近では、濱口竜介監督らとともに、新型コロナによって休館を余儀なくされたミニシアターへの緊急支援活動として始めたクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」で3億円以上もの支援金を集めた。

深田監督の日本の映画界を変えようとする試みは、実は8年ほど前から始まっている。映画の多様性を創出するNPO団体「独立映画鍋」を共同設立し、インディペンデント映画の多様性を守ろうとするムーブメントをけん引してきたのだ。

しかし一方で、こういったミニシアターやインディペンデント映画の公的支援に対し、異論を唱える声も聞こえる。なぜなら、日本の映画界は2019年には史上最高の興行収入を誇り、過去10年以上、興行収入において邦画シェアは外国映画のそれを上回っているからだ。日本の映画界そのものは十分潤っているはずなのに、なぜ、ミニシアターやインディペンデント映画への支援が必要なのか――。深田晃司監督が考える日本映画界の課題とは。

深田晃司監督

「ミニシアター」という愛称は日本独特

――深田監督はコロナ禍において3億円以上もの支援金を「ミニシアター・エイド基金」で集め、118劇場103団体に分配されました。でもそれだけでなく、「SAVE the CINEMA」という団体も発起し、ミニシアターの緊急支援を募るために政府や関係省庁へ要望書を提出をされていますね。

深田晃司監督(以下、深田) :「ミニシアター・エイド基金」はとりあえず劇場がコロナ禍のなかの最初の数ヶ月を乗り切るまでの取り組みでした。でも、ミニシアターの危機は今年急に始まったわけではなく、コロナ禍の前から映画館の数はずっと減り続けています。コロナ禍をサバイブしたとしても、ミニシアターを取り巻く環境が変わらなければいつか必ず潰れてしまう。現状維持ではダメで、ミニシアターに対する公的支援を増やすことが必要だと思います。

それにはまず、「ミニシアターは何なのか」という意味を改めて考えなければいけない。ミニシアターが抱える問題は山積しており、結局、このコロナ禍ではそういった問題が顕在化されただけなんです。

――そもそも「ミニシアター」という呼び方も日本独特ですよね。海外の映画人に「ミニシアター」という言葉を使い、怪訝な顔をされたことがあります。

深田:日本では映画館のサイズで「ミニ」と呼ばれていますが、海外だと「アートハウス」や「アートシネマ」という名称を使われることが多いです。つまり、海外のミニシアターは主に“作家性”や“アート性”の高い映画や小さな外国映画を上映する劇場というふうに捉えられている。

対照的に、日本のミニシアターという言葉は、それ自体はもう定着し愛されている呼称なので良いのですが、シネコンとの差異を“劇場のサイズ”のみにあるような誤認を誘い、「採算のとれない劇場は、潰れてしまっても仕方がない」という市場原理的な意識をやや助長してしまっているような気がします。でも、もしミニシアターがなければ、邦画にしても外国映画にしても、多様な作品を鑑賞できる場所がなくなりますよね? そういった意味で、ミニシアターは文化の多様性や公共性に貢献しています。だからこそ、ミニシアターのもつ公的な価値に見合った助成を国に提供してほしいと思いますね。