子育てのゴールとは?

もちろん、ハーバード生と言えど、大学に入っていきなりこれらのことが身についたわけではありません。どういうことかと言うと、ハーバード生の親は、我が子が小さなうちから、好奇心の向くことにチャレンジさせ、得意を見つけて伸ばす手助けをしているということです。同時に、世界で現実に起きていることに目を向けさせ、座学や筆記試験では得られない体験をさせて、広い視野を持たせているのです。それは、「ハーバードに合格させるために」と思ってしていることではありません。そもそも子育てのゴールの設定が「よい大学に入れること」「よい企業に入れること」ではないからです。

ハーバード生たちは、「Make an impact (社会に影響を与える)」という言葉を頻繁に口にします。つまり、彼らの親たちは「社会を良い方向に変える人材に育てる」ことを子育てのゴールに設定しているのです。そのためには、小さな頃から何が必要かを逆算して育ててきた結果として、子どもたちが「Make an impact」志向の強いハーバードに入っている、と言ったほうが正しいでしょう。

けれど日本では、受験システムが異なることもあり、子どもへの評価の物差しのメインは、テストの点数と偏差値です。「こんな課外活動でリーダーを務めた」「○○コンクールで入賞した」ということが評価されるのは、その小さな世界の中だけのことになってしまいます。すると、小さい頃からするべきことを逆算しても、「この教科が苦手だから塾に入れなきゃ」「中学受験で成功するためには、どこどこの塾でいいクラスに入って」……ということになりがちです。

このようなことを言うと、必ず「うちの子はハーバードを受けるわけではないから大丈夫」という声が上がります。けれど、ハーバードを受けなければ、あるいはずっと日本にいるならば、スルーしてよい問題なのかは疑問です。

ゴールから逆算する子育て

オンライン化が進み、どんどん国境の意味がなくなっていくこれからのグローバル時代。今後、日本でも転職は当たり前になり、オンラインでつながる世界中の競合や同士を相手に仕事をすることになります。今の子どもたちが社会に出る5年後、10年後、たとえ日本国内にいたとしても、彼らが一緒に仕事をするのは、小さな頃から「評価基準はテストの点数だけではない教育」を受けてきた世界中の人たちです。

もちろん志を持って勉強し、学びたい学問をできる大学を目指すのは価値のあることです。しかし世界の基準が、学校の名前、学校の成績オンリーではないことは確かなのです。そんな社会で我が子が自信をもって生き生きと活躍してほしいと願うなら、リーダーシップ人材へと育てて社会に送り出すことをゴールに設定し、そこから逆算した子育てをするべきなのではないでしょうか。

ただここで、「リーダーシップ」の概念が、アメリカと日本とでは大きく違うことを記しておかなければなりません。リーダーシップといっても、「学級委員長になりなさい」「政治家を目指しなさい」ということではないのです。そもそもアメリカは、普通の人々が国のリーダーになるべきだという思想で建国されています。リーダーシップとは、人々の安全と平等を実現し、世界を良い方向に導くために、特殊な一部の人ではなくすべての人が備えるべきものなのです。「すべての市民がリーダーシップを取れる社会」という発想が、世界にないものを作り出すイノベーションの創出にアメリカが長けている理由の一つに思えます。