2019年、シェアハウス「ギークハウスプロジェクト」の発起人として知られるブロガーで作家のpha氏が、文学フリマで『夜のこと』という自身の赤裸々な恋愛体験を執筆した私小説を出し話題になった。
年々参加者が増え、地方でも頻繁に開催される文学フリマ。最近ではpha氏のようなネットで著名な人々も同人誌を作り現地で販売している姿が見られる。インターネットで気軽に文章を書いたり読めたりできる今の時代において、なぜ文学フリマはこれほど盛り上がり、ヒット作を生み出しているのか。pha氏と文学フリマ代表の望月倫彦氏が語り合った。
(取材・文/園田もなか 撮影/後藤 巧)
望月:はじめまして、ですね。普段からTwitterなどではよく拝見しているので、一方的になんだか知っているような気分ですが。
pha:ありがとうございます。僕のほうも文学フリマにはいつもお世話になっています。
望月:本、面白く拝読させていただきました。ただ、ちょっと気になったことがあって。
pha:なんでしょう。
望月:作中で文学フリマに出て260部ほど売れたと書かれていたじゃないですか。実は、文学フリマ東京の配置って僕が担当しているんです。名簿を見ながら、著名な方はなるべくブースの外側に配置して、人が混雑しないようにしている。
ただ、phaさんのことは以前からよく存じ上げていたはずなのに、名前を見たときにそことつながらなくて、そういう名前のサークルか何かだと思って普通の島中に配置してしまったんです。本を読みながら、そんなに売れたとなると島中なのに混雑して大変だったのでは……と。この本を読んでそんなことを心配するような人間は僕くらいだと思いますけど(笑)。
pha:いやいや、全然問題なかったですよ。たしかにたくさんの人に来ていただきましたが、行列ができるというほどではなかったので。
望月:それならよかったです。
――phaさんもそうですが、昨今の文フリでは著名な方も出店するようになっていて、これからも増えていきそうですが、それで他の方が肩身が狭い思いをしていたりすることはないのでしょうか。
望月:もちろん大行列ができてしまって嫌だと感じる人もいるかもしれませんが、そのおこぼれを狙ってやろうと考える人もいる。押し寄せた200人のうち一人や二人がこっちに流れてくるかもしれない、と。単純にチャンスは増えますよね。イベントとしては、プロもアマチュアも、有名人もそうでない方も、みんな一緒くただから面白いと思っています。商業の人たちだけなら、本屋に行けばいいだけの話ですからね。