アメリカ大陸の分断が生み出した「ティラノ軍団」の多様性

ティラノサウルス徹底研究 第6回
好評連載中の「ダイナソー小林の超肉食恐竜ティラノサウルス徹底研究!」
前回は、“血の王”リトロナクス・アルゲステスと“殺戮モンスター”テラトフォネウス・クリエイについて書かれた論文「暴君恐竜の進化は、白亜紀後期の海の上昇と下降を追跡する」を参照し、ティラノ軍団のメンバーが最新研究で入れ替わったことを紹介しました。
今回も引き続きこの論文を読み解きます。

大陸の変化が、恐竜の進化に与えた影響とは

さて、「暴君恐竜の進化は、白亜紀後期の海の上昇と下降を追跡する」という研究の面白いところはこれだけではありません。もう一度、論文のタイトルに注目してみてください。なぜか「海」という言葉が入っています。ティラノ軍団と海にはどのような関係があるのでしょうか?

まずは、アメリカの地理についておさらいしておきます。あるサイトに掲載されていた「アメリカ旅行人気都市ランキング」では、1位がニューヨーク、2位がハワイ、3位ラスベガス、4位オーランド、5位シカゴと続きます。ちなみに私のイチオシであるジャズの街、ニューオリンズは6位。綺麗なビーチのあるサンディエゴは7位です。

シーフードが美味しいシアトルは17位、私がかつて暮らしていたオースティンは21位、アラモの砦があるサンアントニオは24位です。番外としては、ロッキー山脈を有する州(モンタナ州、アイダホ州、ワイオミング州、コロラド州、ユタ州、ニューメキシコ州)があります。ロッキー山脈は北にも延びていて、アルバータ州とブリティッシュコロンビア州にまたがり、「カナディアンローッキー」とよばれています。

アメリカの地図を広げて、これらの都市がどこにあるかチェックしてみてください。東海岸に位置する都市は、ニューヨークとオーランド。東海岸に位置するのは、シアトルとサンディエゴ。また、ミシシッピー川の河口にある町がニューオリンズです。そして、おそらく中学校の授業で習っているはずの、ロッキー山脈やアパラチア山脈、グレートプレーンズの場所も見つけてください。

アメリカ本土は、ミシシッピー川から西を西部、それより東を東部と表現します。そしてアパラチア山脈は、東海岸線沿いに連なる山脈で、一番高いところで2000メートルほどの、美しい丘陵地です。グレートプレーンズは、ロッキー山脈の東に広がる大平原で、ここには北米大陸の多くの恐竜化石産地があります。

このグレートプレーンズは今でこそ大草原が広がるエリアですが、じつは恐竜時代は海でした。白亜紀の中期から終わりにかけ、「西部内陸海路(Western Internal Seaway)」と呼ばれる浅い海が広がっていたのです。

この海は、北極海とメキシコ湾をつなぐもので、北米大陸を東西に分断していました。つまり、この時代の北米大陸は、西の大陸(ララミディア大陸)と東の大陸(アパラチア大陸)で構成されていました。