炎上ホームレス記事、何が「問題の核心」なのか本職ルポライターが語った

さらに一歩、踏み込んだ先にあるもの
鈴木 大介 プロフィール

その視座に立てば、やはりホームレス当事者への取材は、裏稼業と同様に知的好奇心を大きく刺激するものだった。

彼らがもつ最大のライフハックは「真夏と真冬をどう超すか」と「収入と食事をどうやって調達するか」。彼らは「ホームレス」という状態であって「ジョブレス」ではないから、「固定の住所がない状況でどう糊口をしのぐか」というテクニックの達人でもある。

「住所もないのに携帯電話をどうやって手に入れるのか?」

そんなスキルですら、一般人からすれば目から鱗の新奇なネタだ。

 

さらに気象災害の乗り越え方、制度と人権のはざまで、行政と交渉して「公有地で寝泊まりする権利」を獲得するスキル、現金がなくなった際、病気になった際の立ち向かい方、そして「いつまでその生活を続けるのか、続けられるのか」に絡む、独特の達観や倫理感……。

彼らは、固定の住所に住む人が知りえない知識とメンタリティを持つ、いわば都市を生き抜くブッシュクラフトインストラクター(山野のサバイバル術講師)。人生の大先達のようにも思えたそんな彼らへの取材は、「自分より生存力のある人へのリスペクト」を常時覚える、純粋な「学びの喜び」に満ちた時間だったのだ。

どうだろうか?

実は僕は、今回の炎上した記事にも(炎上後に修正を加える前の原稿ですらも)、彼らの生き抜く術に対する好奇心や、その技術に対するリスペクトを感じることができた。

これが、僕の感じた「苦みを伴う懐かしさ」の正体だ。

「一歩踏み込んだ先」にあるもの

もちろん、今回炎上した記事は、全然褒められたものではない。

僕は、この当該記事から唾棄すべき「見世物小屋的な露悪趣味」の悪意は一切感じ取れなかったけれども、だからといって「肯定もできない理由」が大きくふたつある。

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