炎上ホームレス記事、何が「問題の核心」なのか本職ルポライターが語った

さらに一歩、踏み込んだ先にあるもの
鈴木 大介 プロフィール

では一方、サブカル誌におけるホームレス界隈の記事へには、どんな需要があったか。

それこそ当時は「ホームレス取材のエキスパート」みたいな先輩方も数々いたから、そこは僕ごときが「たくさん取材した」なんて言えないのだけれど、僕もホームレス当事者へ取材する機会は何度もあった。

特定の住所を持たない「野宿者」もそうだが、そもそも僕が専門としていた裏稼業の取材対象者とは、「固定の住居とホームレス状態のはざま」に生きる人々でもあった。住民票の住所に住んでいる人の方が少数で、多くはサウナやカプセルホテルで暮らしていたり知人や交際相手の部屋に身を寄せていたりするから、彼らの言葉でいう「寒くなる」(その稼業で稼げなくなる)、または「ガラ交わし」「飛ぶ」(トラブルを起こして逃走する)の際には、一時的なホームレス状態に陥ることが多かったのだ。

そんな経緯で「ホームレスという生き方」にも取材が及ぶのは必然だったが、そこで取材して得た情報に読者が求めていたのもまた、……やはり裏稼業ネタ同様の「いつかは使えるかもしれない実用性」だったのだ。

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彼らのスキルへの知的好奇心

その「いつか」とは、他者と連絡の取れる固定の住居に帰ることをやめて、社会、行政、会社、家族や知人などとの接点を一切断絶したいと思うときだ。

借金、こじれた人間関係、過大な責任、暴力被害等々、極まった困窮状態に追い込まれた人には、「それまでの人生のしがらみを一切断絶したどこかで生き直したい」と思う時がある。そして、そんな未来が想定内にある読者にとって、「ホームレスという生き方を成立させる人々のテクニック」は、本当に「いざのいざ」というときに役立つ実用情報としての需要があるのだ。

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