炎上ホームレス記事、何が「問題の核心」なのか本職ルポライターが語った

さらに一歩、踏み込んだ先にあるもの
鈴木 大介 プロフィール

この人たち、面白半分で書いていい人じゃないよね? 書くべきは、彼らを排斥してきた社会の残酷さだし、「被害者転じての加害者」である彼らを差別し攻撃することじゃなくて、その元の被害や孤立を無くす社会になろうって提言だよね?

彼らは単に、悪賢く善悪の基準を捨てた人なのではない。彼らは逮捕や刑罰じゃなくて、むしろ保護や福祉の対象ってケースが多々ある。そのことに気づいてから、興味本位の裏モノライターから社会派ルポライターに鞍替えしたというのが、物書きとしての僕の、ちょっと残念な来歴だ。

そんな僕にとって、今回炎上した記事を読んで甦るのは、まさに苦く懐かしい、その「鞍替え前の自分自身」の記憶だったのだ。

「実用記事」を求める読者

実は、往年のサブカル誌には、裏稼業記事と同様にホームレス界隈の記事が定番としてあり、いずれも同じ「需要」のもとに書かれていた背景があった。

その需要とは何か? もちろん、見世物小屋的な露悪趣味の需要も一部にあった。けれどそんな記事が定番となって繰り返し掲載された理由は、純粋に「実用記事」としての需要があったからだ。

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例えば裏稼業記事によって読者が得るのは、「安心感」だ。

今の仕事を失ったらどうやって生きていこう。どんな仕事もうまくいかないし、いざ食えなくなったらどうしよう。そんな不安を心の片隅に抱える読者に対して、裏稼業記事はひとつの安心を与えることができる。

「今はやらないにしても」、切羽詰まったらこうやって食っていけるかもしれない。どうにもならなくなったとき、盗みをしたり飢え死にするぐらいなら、こんな稼業もある。なんなら、盗んでも捕まらないテクニックもある(正確には「捕まりにくい」に過ぎないが)。

自らの見えない将来に不安を抱えた読者がいる限り、そこには「いつかは使えるかもしれない実用記事」としての需要が確実にあるのだ。

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