Photo by iStock

炎上ホームレス記事、何が「問題の核心」なのか本職ルポライターが語った

さらに一歩、踏み込んだ先にあるもの
11月11日に発表された「cakesクリエイターコンテスト2020」の結果が話題を呼んでいる。優秀賞を受賞した『ホームレスを3年間取材し続けたら、意外な一面にびっくりした』という記事が、SNS上で「社会的弱者への配慮に欠けている」との批判を受けたからだ。これまで社会から排斥された人々を数多く取材してきたルポライターの鈴木大介氏が、今回の「炎上騒動」を論じた。

炎上で感じた「苦みを伴う懐かしさ」

今回、cakesと「ホームレス探訪記」に対する炎上騒動の経緯に目を通して、何とも言い難い気持ちになった。

怒り? 腹は立つが、それだけじゃない。

呆れ? いや、それも違う。

ああこれは、あれだ。

子ども時代にめちゃめちゃハマっていた「痛々しい世界観の漫画」を読み返してしまった時の、あの感じ。成人してから中学生時代の教科書に書いたポエムを読み返すような……「苦みを伴う懐かしさ」だ。

自らの過去を少々懺悔しながら、今回の騒動について論じる機会をいただきたい。

思い出された裏モノライター時代

僕自身は現在しがない障害当事者、兼文筆業みたいな立場なのだけど、その前は貧困や社会的排斥で苦しむ弱者の代弁を目指す、肩ひじ張ったルポライターだった。けれどそのさらに前には、いわゆるサブカル誌、ネオ実話誌とか言われたカテゴリで雑文を書き散らす裏モノライター的な書き手だったという経歴がある。

Photo by iStock
 

そんな当時、僕がなにより得意としていたのは、そうした雑誌に定番のコンテンツだった、「裏バイト情報ネタ」「裏稼業ネタ」だ。

取材の端緒は、脱法スレスレ、もしくはもろに法に抵触する行為で稼ぎ生計を立てる人々が、どんなテクニックでその稼業を成立させているのかの裏を知ること。けれど、対象者に何度も取材を重ね、一緒に飯を食ったりする中で、彼らは法に触れる人かもしれないが、根っからの極悪人なんかじゃないことが見えてきた。

面倒くさいぐらい情に厚い部分があったり、怠惰に見えて生きづらさを感じるほどの几帳面さを持っていたり。何より彼らには、過去に社会に馴染めず集団から排斥されるという経験を重ねてきた「弱者・疎外された者の像」、または子ども時代から貧困や暴力の中で与えられるべきものを与えられずに育ってきた「置き去りにされた者・元被害者の像」が共通していた。