2020.12.13
# 認知症

40年かかわってきた医師の結論「認知症は水を飲めば治る!」

たった1%の水欠乏が意識障害を起こす
竹内 孝仁 プロフィール

しかし、入居2日目の夜、トイレの入り口の前で放尿してしまう。トイレを探すSさんの様子から、職員は単にトイレの場所がわからないだけだと判断した。次の日から、職員はSさんが迷わないよう、常にトイレの扉を開けておくことにした。その結果、入所20日目には、問題なくトイレに行けるようになったのである。

老人ホーム職員の素晴らしさ

また、Sさんは帰宅願望が非常に強く、一日に何度も荷物をまとめて家に帰ろうとした。裸足のまま外に飛び出していくこともあった。職員は無理に引き止めることはせず、Sさんの話をゆっくり聞くことに専念した。話を聞いた上で、荷物を持ったSさんを、「行ってらっしゃい、気をつけて」と送り出したのである。職員は後ろからそっと付いてゆき、物陰からSさんを見守っていた。

 

一方、Sさんの世話好きの性格を生かし、ホーム内でもグループのまとめ役になってもらった。そのほかにも、元大工の腕を生かして、ちょっとした日曜大工を頼むなど、徐々に役割を増やしていった。職員はお茶や水、おやつに寒天ゼリーを与えるなどして、水分摂取量を徐々に増やす。10日目で、水分量が一日1300ccになると、Sさんはもう帰ろうとしなくなった。そして20日目で1400ccなると、トイレにも問題なく行けるようになった。

Sさんは昼間、クラブ活動やレクリエーションなどに積極的に参加し、夜はぐっすり眠るようになる。また、パワーリハビリによって、両膝の痛みや不安定な歩行が改善され、健康状態も安定した。精神的にも落ちつきが見られ、常に仏頂面だった表情にも、変化が見られるようになった。今では職員を怒鳴り散らすこともなくなり、家に帰りたいと騒ぐこともない。それどころか、新しく入居した人に、「ここの職員の方たちはいい人だから安心しなさい」と声をかけ、積極的に世話役を買って出ている。

最近では、馴染みの利用者と世相や政治について四方山話をする姿や、冗談を言って周囲を笑わせる様子が見られるようになった。世話好きな本来のSさんに戻ったのである。現在、Sさんは地域の活動にも積極的に参加し、神社の記念祭で挨拶をしたり、清掃活動に参加したりしている。異常行動は全く見られない。認知症は治ったのである。水分補給で体調を整えたことと、異常行動の原因を探ろうという職員の姿勢が、Sさんを治したと言える。

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