これは何かの冗談ですか? たった「2時間半」で命にかかわる重要法案が通ってしまう「この国の現実」

「生殖補助医療法案」可決に思うこと
安積 明子 プロフィール

だが医療のためのドナー数が減少すれば、衛生面で難がある非公的なルートでの配偶子の入手が増加しかねず、コストが高い海外での治療を余儀なくしてしまう。

こうした問題を解決するためには、配偶子の提供システムに国が積極的に関与する必要があるだろう。

このように「出自を知る権利」についてだけを見ても、克服しなければならない問題は数多い。

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「臓器移植法案」のときも…

にもかかわらず、果たしてこれらをわずか2年間で成し遂げることができるのか。

その基本となる法案をわずか2時間半の審議で採決して良いのだろうか。

生殖補助医療と同じく高い生命倫理に関わる臓器移植法案の場合、参議院での審議時間は8時間だったが、衆議院では厚労委員会の下に小委員会を設置して2年以上かけて意見聴取を行った。

それでも毎日新聞が「人の死、議論深まらず」と見出しを立て、朝日新聞は「『改正ありき』急いだ審議」と報じたのだ。

審議時間ばかりではない。このような高い生命倫理に関する法案は、そもそも党議拘束になじむ性格ではないのではないか。

実際に1997年の臓器移植法案採決と2009年の同法改正案採決では、「議論が尽くされていない」という理由で棄権した共産党を除いて各政党は党議拘束を外している。

少子高齢化社会にあって生殖補助医療の充実は欠かせないものだが、だからこそ、その“神の領域”に踏み込むのは慎重にありたいものだ。