これは何かの冗談ですか? たった「2時間半」で命にかかわる重要法案が通ってしまう「この国の現実」

「生殖補助医療法案」可決に思うこと
安積 明子 プロフィール

「想像を超えた絶望がある」

もっとも法案の内容の不十分さは認識されており、それを補うべく付帯決議も作られている。法案成立後にこれから2年かけて内容の充足を図っていくというが、高度な生命倫理の問題であるゆえに極めて責任が重くなる。

それにしてもこれほど重要な法案をわずか2時間半で委員会を通してしまうというのは驚きだ。

「生殖補助医療は、親とは別のひとりの人間を誕生させる行為になります」

19日の参議院法務委員会で共産党が招致した慶應義塾大学の長沖暁子参考人は生殖補助医療の重要性を述べるとともに、AIDで生まれた人たちの出生を知ったきっかけが両親の離婚や死去などの辛い場面が多いという現実を示し、「想像を超えた絶望がある」と主張した。

「生まれてくる子供は治療について承諾することができない。だからこそ、子供が健やかに生きるための権利というのを守らなければならないと思います」

そのために重要なのが「出自を知る権利」であり、多くの国では「子供の権利条約」を根拠に子供の福祉という観点から認めている。

 

日本でも2000年12月の厚生科学審議会先端医療科学評価部会生殖補助医療に関する専門委員会報告書などで「出自を知る権利」を肯定的に捉えてきた。

アイデンティティーの確立はもちろん、近親婚を防止する上でも「出自を知る権利」は重要だ。医療を受ける際の問診票にも、遺伝的な体質を記載する必要がある。

その一方で、配偶子の匿名性の問題も存在する。このために現在では精子提供者が減少しており、治療が困難な医療機関も存在する。