これは何かの冗談ですか? たった「2時間半」で命にかかわる重要法案が通ってしまう「この国の現実」

「生殖補助医療法案」可決に思うこと
安積 明子 プロフィール

厚生科学審議会生殖補助医療部会は2001年7月から生殖補助医療制度の具現化について検討し、2003年5月に最終報告書を取りまとめたが、法整備への動きは鈍かった。

それではいけないと超党派の議員たちが立ち上がり、今回の法案提出に至ったという経緯がある。

しかしながらその内容は生殖補助医療を法律の中に組み込むものの、十分なものであるとは思えない。

 

今回の法案は「十分」なのか

というのも、他人の卵子を用いて出産した女性を母とし、夫の承諾を得てAID(非配偶者間人工授精)で出産した子供の嫡出性を夫は否定できないとするのは、すでに裁判で示されているからだ。

たとえば最高裁第二小法廷が2007年3月23日にタレントの向井亜紀さんがアメリカで代理母によって授かった双子の男児について、「自分の卵子を提供した場合でも、母子関係の成立は認められない」と判断したのがそれだ。

同決定はその理由として、民法(772条1項)が母子関係が懐胎・出産により当然に成立する規定を設けていること、1962年4月27日の最高裁第二小法廷判決など判例では母親と非摘出子との母子関係も出産という客観的事実により当然に成立すると解されてきたことを挙げている。

同時に同決定は、「遺伝的な繋がりのある子を持ちたいという真摯な希望と、他の女性に出産を依頼することについての社会一般の倫理的感情を踏まえ、立法による速やかな対応が強く望まれる」とも述べている。にもかかわらず今回提出された法案は、これに十分に応じたものといえるのだろうか。