G7伊勢志摩サミット(2016年5月26日から)では気候変動が主要議題の一つとなったが…Photo by gettyimages
2020.12.05

グレタ演説への日本と欧米のあまりに大きな落差の裏には何があった?

今度こそ日本にESG思考は根付くか4

菅首相が10月26日、自身初の国会所信表明演説の柱の一つに「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、脱炭素社会の実現を目指す」と「宣言」したことは、驚きをもって迎えられた。すでにカーボンニュートラル社会に舵を切っている欧州各国の首脳たちからも歓迎コメントが出た。しかし世界はずっと先に行っている。温暖化対策への取り組みがすぐれる企業へマネーを配分するESG(環境・社会・企業統治)投資は、いまや世界の機関投資家のあいだでは当たり前だ。もともと地球温暖化の認識に対して世界各国と日本政府のあいだには大きな溝があり、日本はようやく追いついたと言える。
バイデン米国新政権の誕生で、ますます世界は脱炭素社会へ加速するだろう。首相のカーボンニュートラル宣言を、産業界はどのように個々の中長期計画に組み込んでいくのだろうか。ESGに詳しい夫馬賢治氏の著書『ESG思考』から、脱炭素社会の新しい経済に移行するために、いま私たちが知っておくべき必須の基本事項をご紹介する。今回はその第四回目だ。

グレタ演説にグローバル企業が共感

2017年12月、大手機関投資家225機関が集い、二酸化炭素排出量の多い100社に対し気候変動対策を真剣に進めるように迫る活動を開始した。この活動「クライメート・アクション 100+」では、二酸化炭素排出量を削減し2℃目標を遵守する方針はあるか、取締役会の中に気候変動問題に詳しい取締役はいるか、石炭火力発電への依存度を段階的に廃止する計画はあるか、などを要求していく。集まった225の機関投資家の運用資産は、総額で約3000兆円と巨大だ。ターゲットとされた100社の中には、日本企業も10社含まれていた。

そのとき日本は、石炭火力発電所の建設がラッシュを迎えており、新設プロジェクトの数は40を超えるという状態だった。日本企業は、石炭火力発電を進める日本政府と、石炭火力発電から再生可能エネルギーへの切り替えを迫る自分たちの株主との間にある大きなズレを目の当たりにし、頭を抱えていくことになる。

日本では気候変動に関するメディアの関心も低かった。メディアが世界的な気候変動の話題にようやく関心を寄せるようになったのが、2019年9月にニューヨークで開催された国連気候行動サミットだ。就任したばかりの小泉進次郎環境大臣が初参加する国際会議ということで、日本のマスコミが会場に殺到した。そこで当時16歳だったスウェーデンの少女グレタ・トゥンベリが、怒りをあらわに演説し、「よくもまあ、そんなことを(How dare you)」という名台詞を残す。これが一気にお茶の間の話題をさらった。

2019年9月23日、国連気候行動サミットで演説するグレタ・トゥンベリ。Photo by gettyimages
 

その結果、日本で巻き起こったのは、環境活動家グレタ・トゥンベリの脱資本主義的な主張に対し、「環境よりも経済が重要」というオールド資本主義思想を丸出しにした反論だった。しかし、ニュー資本主義に移行済みのグローバル企業と機関投資家は、グレタ・トゥンベリの発言に大いに共感した。脱資本主義とニュー資本主義は立脚する思想は違えど、気候変動対策そのものを進めるべきという総論では考えが一致していたからだった。

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