2020.12.02

日本人が知らない、居心地よさだけでないスターバックス本当の先進性

今度こそ日本にESG思考は根付くか1
夫馬 賢治 プロフィール

利益が減っても環境を考慮せよ=「脱資本主義」

4分類の図の左上の象限に位置するのが「脱資本主義」だ。この立場の人は、オールド資本主義の人が「利益」「利益」と言って利益ばかりを追求することを快く思わず、利益が減ったとしても環境・社会への影響を考慮した経済活動が必要だと主張する。

たとえば、里山資本主義という考え方を藻谷浩介が2013年に提唱し話題となった。藻谷の考え方は、富ばかり追求していても人は幸せにはなれず、むしろ富を追求する姿勢が「マネー資本主義」という不幸な経済を生み出しているので、そこから脱却しマネーに依存しない生き方をしていこうというものだ。利益や富を重視せずに、地域でのつながりの中で生きていくことが幸福感をもたらすと述べている。

 

このように脱資本主義は、オールド資本主義を批判するときに出てくる認識だ。環境アクティビストは、「企業が利益ばかりを求めた結果、環境破壊を引き起こしている」と非難する。ソーシャル派は、「企業は自社の私欲ばかりを追求せずに、幅広い社会の便益とのバランスを取りながら経営すべき」と主張する。また、この脱資本主義は、古くは共産主義や社会主義が理想として掲げていたもので、「労働者を搾取から解放するためには資本主義を捨てなければいけない」と闘争していた。

4象限の左側にある「オールド資本主義」と「脱資本主義」は、仲が悪そうに思えるが、「環境・社会への影響を考慮すると利益が減る」という考え方を共有している。そこでの違いは、「利益が減るからやるべきではない」か、「利益が減ってもやるべきだ」というものでしかない。

環境を考慮したら利益が増える=「ニュー資本主義」

一方で、右側の象限は、前提が大きく異なり、「環境・社会への影響を考慮すると利益が増える」と考える。そして、利益が増えるのであれば、当然「環境・社会への影響を考慮すべき」というシンプルな結論を持っているのが、右上の「ニュー資本主義」の人々だ。

こんな考え方がありうるのかと疑う人もいるだろう。しかし、この考え方は10年ほど前から世界の機関投資家やグローバル企業に浸透してきている。たとえば、環境や社会を考慮することで投資パフォーマンスを向上させる投資戦略「ESG(環境Environment、社会Social、ガバナンスGovernanceの頭文字)投資」で運用されている資産は年々増え、2018年の時点では33・4%と世界全体の資産の3分の1がESG投資で運用されるまでになっている。いわば、脱資本主義の人たちが敵視し、オールド資本主義の人にとっての憧れの場所だった「ウォールストリート」は、もはやニュー資本主義に傾倒している状況だ。

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