2020.12.02

日本人が知らない、居心地よさだけでないスターバックス本当の先進性

今度こそ日本にESG思考は根付くか1
夫馬 賢治 プロフィール

同じ年には、他にも数多くの定量目標が設定された。たとえば、「今後3年間で直営店舗からの二酸化炭素排出量を25%削減」「今後3年間で直営店舗での消費電力の50%を再生可能エネルギーに切り替え」「全新設店舗で環境ビルディング認証を取得」「今後8年間で飲料カップの25%を再利用可能なものに切り替え」というようなものだ。

さて、あらためて、これらの内容が記載されていたのは、どの年のスターバックスの年次報告書だろうか。気候変動や、飲料カップの再利用といった内容があることから、今度こそここ数年のものだと思ったかもしれない。しかし残念ながら答えはまったく違う。これは、2008年度の年次報告書だ。

PRのためでもないのに、なぜわざわざ?

スターバックスの経営については、カジュアルで洗練された内装、フレンドリーな店舗従業員の育成文化、消費者から支持され続けるブランドマネジメントなどが大きく注目されてきた。しかしその一方で、スターバックスがそれら以上に何を重視し、定量目標まで設定していたかについては、日本ではほとんど着目されることがなかった。それもそのはず、スターバックスの店内表示や広告を見ても、フェアトレードや環境配慮などといった表示はほとんどない。この事実から、スターバックスは、消費者から支持されるために必要なものはフェアトレードや環境配慮といった「きれいごと」ではなく、あくまで「商品の質」と「居心地の良い空間」だと捉えていたことがうかがえる。

 

では、スターバックスは、消費者に訴求するためでもないのに、何のために、わざわざそこまでしてフェアトレードや環境配慮を大規模に手掛けていたのだろうか。実は、このような「わざわざ」とも思えるアクションを2008年頃から展開していたのは、スターバックスだけではない。日本でもよく知られているグローバル企業はほぼすべてこの時点で同様のアクションをとり始めていた。

スターバックスが捉えている視界を我々が理解するためには、経済に関するさまざまな認識を俯瞰的に理解しておく必要がある。

図は、経済に関する認識や思想を、2軸を用いて4つに分類したものだ。横軸は、ビジネスが環境・社会へ及ぼす影響を企業が考慮するようになると、その企業の利益は増えるとみるか、それとも減るとみるか、の違いだ。縦軸は、企業が環境・社会への影響を考慮することに賛成か、それとも反対か、というものだ。この2軸で分類すると、4つの異なる経済認識が浮かび上がってくる。

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