ゴミ袋に水中眼鏡、ヘアネットによる簡易防護服を着た検査の受付。 *画像はすべて筆者提供
# 新型コロナウイルス

世界初!360万人が受けたスロヴァキアの「全国一斉コロナ検査」、現地で味わった混乱と希望

東北地方から福島県を除いたくらいの面積に、兵庫県の人口に近い550万人が暮らす中欧の小さな国「スロヴァキア」。1989年に社会主義体制が崩壊してまもなくチェコと分離して30年が過ぎたいまなお、「チェコスロヴァキア」と言ってはじめてわかってもらえることがある。

2020年のパンデミックはこの小さな国をも容赦なく巻き込み、翻弄してきた。前編では、春の第一波をほとんど無傷で乗り越えた同国が第二波に襲われるまでを、首都ブラチスラヴァに暮らす一市民の目線から描いた。

経済損失の大きいロックダウンが迫られるなか、世界初となる国を挙げての「一斉コロナ検査」は無事完遂できるのか。いざ検査を受けての実感はーー。スロヴァキアのコロナ対策、現地からの特別ルポ、後編をお送りする。

ロックダウンか、全国一斉検査か

コロナの全国一斉検査をする。スロヴァキアのイゴル・マトヴィチュ首相(47歳)は10月17日、突然、発表した。1日に緊急事態宣言がなされてわずか3週間あまりで、1日あたり500人台だった新規感染者はまたたくまに1000人台を越え、さらに2000人台へと指数関数的に増えていった。隣国のチェコでは1000人台だったのが1万5000人台にまで感染爆発し、医療崩壊しかねない状況に陥っていた。

イゴル・マトヴィチュ首相(右)と、スロヴァキア共和国軍のダニエル・ズメコ将軍
 

経済的な損失の大きいロックダウンか、徹底的な検査をして封じ込めをはかるか。国民の命と暮らしを守るむずかしい選択が迫られるなか、首相は辞任覚悟で検査の実現に向けて取り組んだ。

最初に発表された大枠は、ざっと次のようなものだった。2週連続で週末に検査し、陽性の場合は自宅で10日間の検疫をする。2回するのは、検査の精度を高めるためである。対象は10歳以上の全国民。外国人やホームレスも含まれる。軍が指揮し、医療関係者が検査する。結果を記した証明書が発行され、封筒に入れて渡される。

まず10月23日から25日、感染者のとくに多い地区でパイロットテストをする。それから翌週の10月30日から11月1日と、翌々週の11月6日から8日に全国一斉検査をおこなう。医大生を含む医療関係者の募集もはじまった。報酬は時給7ユーロ(1ユーロ=124円、2020年11月11日現在)で、陽性が一人出るたびに20ユーロの危険手当が加算される。ここからいろんなことがばたばた決まっては、めまぐるしく変更されていった。