2020.11.21
# 本

「なんでこんなに政治の世界が酷いんだろう」…この国で“痛みを抱えて生きる”ということ

上間陽子さんインタビュー
山本 ぽてと プロフィール

なんでこんなに政治の世界が酷いんだろう

近所に住む人たちは、みんな優しくて親切だ。でも、ここでは、爆音のことを話してはいけないらしい。切実な話題は、切実すぎて口にすることができなくなる。
海をあげる所収「海をあげる」より)

――『海をあげる』では、上間さんの生活の話や、祖父母の話や基地の話など、様々な題材を扱っていますが、共通するテーマはどこにあるのでしょうか。

上間:「政治」だと思います。

――政治ですか。ああ、そうか。

上間:沖縄でも本土でも、こんなにも、みんなけなげに生きているのに、一生懸命つくっているはずの日々があるのに、なんでこんなに政治の世界が酷いんだろう。いま、娘に水道水を飲ませるのがこわくて、水を九州から買っているんですよ。

昨年、宜野湾市の住民の血液検査をしたら、発がん性のリスクがある有機フッ素化合物PFOSの濃度が全国の4倍、国際的に規制が進むPFHxSは全国の53倍だという数字が出ていました。水源は嘉手納基地近くの浄水場です。基地近くの湧き水が汚染されていたことは知っていましたが、まさか水道水まで汚染されているとは思っていませんでした。

そうしていたら、今年の4月にはPFOSを含んだ泡が街中をもやーっと飛んだ。ひどい状況でしたが、全国での報道は全然なかったですよね。蛍も今年は飛ばなかったですね。夏の始まりに、一匹だけ見つけた。でも、本当にいなかった。

そんなことになっても、基地内へ立ち入り検査もできない。日米地位協定の問題ですよね。みんなそれぞれの生活を一生懸命生きていても、簡単に、想像を超えていくようなことが起こる。なんで営まれている日々と、政治の世界とがつながらないのかという思いがありました。

だからこの本では、連載していたときと、原稿の順番を変えました。私の長い自己紹介、仕事や、暮らしについて書いたあとに、でもこんな生活が、こんな目にあっている。どんなに生活を大切に過ごしていても、水は汚染される。辺野古では、無謀な工事をやろうとして、海に土砂が入れられる。止まらない。

 

――辺野古に軟弱な地盤が見つかり、工費も想定より莫大になって、工期も全然見通せないひどい状態なのに、止まらないですね。そもそも、本土では話題にもされていない。

上間:どう考えてもできない工事なのに、政権がやると決めたから、海が壊されている。普天間の負担軽減で進めているといっていますが、普天間はなにもかわっていません。本土の人たちはなにを見ているのだろうという思いがあります。だから最後の原稿は「海をあげる」にしました。

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