『海をあげる』著者の上間陽子さん

「なんでこんなに政治の世界が酷いんだろう」…この国で“痛みを抱えて生きる”ということ

上間陽子さんインタビュー
「おばあちゃんって、ほら、一人娘のお嬢さまだったでしょ? 畑仕事もしたことのないひとだったのに一生懸命覚えてくれて、安月給のなかで子どもたちを育て上げて、あのひとは本当に素晴らしいひとだっておじいちゃんは思っているんだよ」
 祖母の子ども時代のお嬢様ぶりは、せいぜい鶏の卵を毎日食べていたという程度なのだけど、祖父が祖母を大切にしているのは本当だった。
海をあげる所収「ふたりの花泥棒」より)

(取材・文:山本ぽてと、写真:長谷川美祈)

 

「なんか、書けました、、、、。」

――『海をあげる』は初のエッセイ本ですよね。上間さんは、ふだん論文を書くことが多いと思うのですが、エッセイの形式だから書けたことはありますか?

上間:エッセイの形式は狙ったわけではありません。編集の柴山さんから「SNSで友達に書いているようなことを書いてみてはどうか」と言われたのがきっかけです。

はて? と思ったんですけど、ちょっとやってみようかなと。だいたいいつも柴山さんに言われてやってみて、後からそうだったのね、と気づくことがある。それで「アリエルの王国」という原稿を泣きながら書きあげて、「なんか書けました」と。柴山さんに送りつけた。

柴山(編集者):メールの本文が「なんか、書けました、、、、。」でした(笑)

上間:そのほかの原稿も、書きたいことをダダダダダッと書いて、ダダダダダッと送りつけることをした。そして、この本のもとになった連載がはじまります。そのころは、半年ほど書けない時期で、論文もいくつか止めていたんですよね。だから連載をはじめても、書けなくなって迷惑をかけるかもしれないと不安でした。でも論文のようにうんうん悩むようなことはせずに、日常の言葉を使ったら、あまり苦しくなく書けた。

そうそう、あと、盛らないようにしました。

――盛らないように?

上間:生活のことだから、盛れるっちゃ盛れるじゃないですか。例えば「アリエルの王国」では、朝ごはんに「玄米のおにぎりとほうれん草の炒め物」が出てきます。少なっ! と書きながら私は思っている。いつもはお味噌汁とか、果物とかあるのにって。

――ふふっ、そこですか。

上間:そんなふうに、本当は盛りたいんですけど、でも事実を書こうと思いました。あと娘のことを書いているので、夫にこういう話を出していいのか読んでもらいました。彼は傍若無人にふるまう娘の様子を読んだときも、「ちょっと、かわいすぎないかな?」と心配していて、親ばかぶりを発揮していました(笑)