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賽銭泥棒「逮捕の瞬間」を、顔出し・実名で報じたテレビ局への「強烈な違和感」

「背景への想像力」が必要だ

各局で取り上げられた「逮捕の瞬間」

11月10日から11日にかけて複数のテレビ番組で賽銭泥棒の逮捕劇が報じられた。夕方のニュース番組でその報道を偶然目にした筆者は、強烈な違和感を覚えた。

この事件は10月16日の22時過ぎに埼玉県入間市の神社で起こっている。埼玉県警が提供した動画には、30歳の無職男性が神社の賽銭箱から現金655円を持ち去るところを、張り込んでいた複数の警察官が取り押さえる様子が映し出されていた。男性の顔にはモザイクもかかっておらず、名前についても実名で報じられている。

報道によると付近の神社で賽銭泥棒が相次いでいると情報が寄せられていたことから、3週間もかけて張り込んでいたという。現行犯逮捕した日も4時間以上張り込んだというから警察的には大きな手柄だったのかもしれない。

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埼玉県警から映像の提供を受けた各局は次のような見出しでこの事件を報じている。

「さい銭ドロボウ見つけた! カメラが捉えた逮捕の瞬間」
「境内に4時間強・・・捜査員の“潜み方”」
「緊迫の一部始終 さい銭泥棒に闇の中から・・・」
「『警察だ!』ツルリ転ぶ捜査員も “賽銭ドロ”待ち・・・境内で4時間超」

見出しからも分かるように、テレビ局は賽銭泥棒の逮捕の瞬間を捉えた映像のインパクトを強調している。実際、この映像では犯人を取り押さえようとする捜査員が勢い余って転ぶ様子や、草木を模したモジャモジャの服に身を包む様子が映っており、緊迫した場面なのにどこか滑稽なところがある。

「相次ぐ窃盗という事件性」と「ユーモラスな逮捕劇」の組み合わせがマスメディア的においしいと判断されたのだろう。フジテレビの「めざましテレビ」のようなエンタメ要素の強い情報番組のみならず、硬派な報道路線で知られるTBSの「NEWS23」でもこの事件が同じような切り口で報じられていたのには正直目を疑った。