神田伯山(講談師)×石崎洋司(児童書作家)による「講談えほん」刊行記念対談が講談社にて行われた(2020年11月10日)。その模様をレポートする。
今や大人気の講談師・六代目神田伯山にはいろいろなキャッチフレーズがつく。「日本一チケットが取れない」「100年に一度の天才」「講談界のスポークスマン」そして「毒舌」。
テレビでは確かに毒舌の「黒い」キャラだが、この日、自ら監修をつとめた「講談えほん」シリーズの刊行にちなんだ対談で、文を担当した児童書作家の石崎洋司と話す伯山は真摯そのもの。まっさらな気持ちが伝わってくる「ホワイト伯山」だった。
伯山 今回、「講談えほん」が3巻増えて、全部で6巻になりました。綺麗で格調の高い話が揃いましたね。
石崎 そうですね。
伯山 でも、子どもって、あんまり、学校教育にふさわしくないような、なんか汚いものや下品なものとかの話が好きじゃないですか。
石崎 おしっこ、うんこ、おなら、大好きですね! 絵本でも、そういうテーマを扱った作品はいっぱいあります。
伯山 格調高いのもいいんですけど、子どもには格調低いのも必要なんじゃないかって思うんです。そうやってバランスをとった方がいいと思う。
『荒大名の茶の湯』という話があるんですけど、茶の湯の礼儀作法を知らない加藤清正や福島正則、池田輝政といった戦国大名たちが先に飲んでいる人の真似をして、失敗して戻しちゃったりするんですけど、それを「あ、あれを真似すればいいんだ」と、次の人もわざと戻しちゃう。
失敗に失敗がどんどん重なって汚いことになっていく。この話、僕は持っていないんですけど、他の講釈師の方が、学校寄席に行ってこの『荒大名の茶の湯』をやると、大ウケするそうです。
石崎 子どもたちが爆笑しているのが目に浮かびます。
伯山 汚いお茶を目の前に苦しそうな顔とか「なんでこんな作法をしなきゃいけないんだ」といった嫌な顔とかの表情を講釈師がすると、子どもはとっても喜んでくれるそうです。でも、後ろに並んで聞いている教員たちは笑っていない。(笑)非教育的なものって、子どもにはウケるんです。