さいきまこさんのマンガ『言えないことをしたのは誰?』は養護教諭を主人公に、学校での性暴力の実態を描いた作品です。保健室の物語を題材に漫画を描こうと取材を始めたさいきさんが目の当たりにしたのは、教師による性暴力に苦しんだ女性たちの姿でした。そこでスクールハラスメントの現状を描こうと、1年半の取材をへて「ハツキス」にて連載、20日には最新刊3巻が配信されています。
3巻発売を記念して1巻1話から3話まで無料試し読みができる3回目は、そのような問題が明るみに出にくい原因について考察します。

マンガ/さいきまこ 文/FRaU編集部

教師は生徒にとって絶対的権力者

平成30年度、13歳未満で性被害にあった子どもの数は、明らかになっただけでも1000人を超える――警察庁はこう発表しました。また、文部科学省が発表した平成30年度「わいせつ行為等に係る懲戒処分等の状況」によれば、教師の性暴力に限ってみただけでも、平成30年度にわいせつなどで懲戒処分を受けた公立学校の教員は282名。うち44%が自校の子どもに対するわいせつ行為により処分されています。「学校」での性暴力の特異性は、絶対的な権力の差にあるとさいきさんは言います。

「教師とは、生徒にとって絶対的な権力者。先生がしたことは絶対だから、間違いはないと考えるし、教師もその権力を意識しています。『これはお前のためにやっている』『誰もがやっている』と言いくるめるので、被害者が被害の自覚を持ちづらいのです」

『言えないことをしたのは誰?』でも、生徒の異変に気づき、少しずつ校内での性被害の実態を認識していく養護教諭は、問題解決に向かう難しさに直面、生徒も「私が悪いの」といい、周囲は「そんなことありえない」と取り合ってもらえない現状にぶち当たります。

(C)さいきまこ/講談社『言えないことをしたのは誰?』

「教師による性暴力に関して。これは、学校側も保護者も『起こりうるもの』と考えておくべきだと思います。それは『先生個人を疑う』ということではありません。
取材した感触では、教師間では校内で性暴力がありうるということについて『考えるのさえ不謹慎なこと』という雰囲気なのですが、不謹慎なのは暴力を振るう行為であり、その教師であって、性暴力が起こることを想定することではないはずです。想定していなければ、生徒の訴えがあったときに受け入れられずに否定して、二次加害することにもなります。そうなってしまったら、被害相談を『嘘』と決めつけるのと同じではないでしょうか」

告発を「嘘」とされやすい状況

学校だけではありません。学校ではなくても、性被害の訴えを信じてもらえない状況も少なくありません。例えば先日、ウェブの人生相談記事でDV被害を訴えた女性が、回答者の男性から相談内容は嘘だと断じられ、その後サイト編集部と著者が謝罪、記事を取り下げたことがありました。DVや性被害において、「信じてもらえない」「とりあってもらえない」ことは、性暴力が明るみに出にくい大きな要因のひとつです。さいきまこさんは性被害に遭った方々へも取材をしてきて、そういう環境も含め、告発しにくい状況を危惧します。

「あの人生相談では、文章に違和感がある、というのがその理由だったようですが、DV被害者と接する機会が多い支援者や弁護士は『被害を受けた人が、ああいう語り方になるのはよくある』というようなことをSNSで指摘していました。
別件では、必死の思いで被害の相談をした相手からかなりきつい言い方で『あなたの話は信用できない』と切り捨てられた被害者もいます」

性暴力被害者を助けるために

では私たちは性暴力の被害者を救うために何ができるのでしょうか。

「私は、被害者を助ける行動に出るためには、(1)何が性暴力かを知ること、そして(2)レイプ神話を払拭すること、この2つが必要だと感じています。せっかく行動に出ても『あなたも気をつけなきゃ』『叫び声をあげればよかったのに』などとセカンドレイプしてしまったら台無しですから。
性暴力に限って『被害者にも落ち度がある』と反射的に思ってしまうのは、考えてみれば奇妙な話です。責められるべきは、暴力を振るった側であるはずです。身体的暴力なら、間違いなく誰もがそう思うはずです。でも、性暴力に関しては、私の中にもレイプ神話が巣食っていました。でも、この思い込みは変えることができます。まずは自分の中にレイプ神話が刷り込まれていないか、見つめ直すことから始めてみましょうよ、と呼びかけたいです。

これだけ『恥ずかしいこと』『言えないこと』と思わされている世間で、被害者はやっと声をあげたのです。被害者を貶めるようなことはしない、そして声をあげやすくし、被害者を守る、そういう社会をつくっていけたらと思います」

さいきさんの強い思いが込められた『言えないことをしたのは誰?』。1巻の3話のラストには恐怖で鳥肌が立ちます。しかしこれは、現実を取材したうえでの物語なのです。

1巻3話の無料試し読みはこちら↓

1巻丸ごと読みたい方はこちら!↓

最新刊3巻を読みたい方はこちら↓