故郷で暮らす老親の心身状態が悪くなってくると、「施設に入ってほしい」と考える人は多いと思います。ところが、提案してもほとんどの親は「施設には入らない」と言います。言えばいうほど、頑なになることが珍しくありません。
そんなとき、親に納得してもらう良い方法はあるのでしょうか。
都内在住のマサオさん(仮名54歳)の母親(80代)は山陰地方の実家でひとり暮らししています。認知症というわけではないのですが、判断力が低下。怪しい訪問販売で健康飲料を大量購入したり、屋根や床下の工事の契約をしたり。
「必要なものを買うならいいのですが、買っても段ボールに入ったままです。帰省すると、開けていない段ボールが積まれています。気がかりな請求書があったり……」とマサオさんはぼやきます。
掃除をすることも食事を作ることも大変になってきているのか、お菓子やパンの空き袋などのゴミが台所に散乱していることも。間に合わないことが増えているのか、トイレも汚れているといいます。
ところが、介護保険を申請してホームヘルパーに入ってもらおうと言っても「必要ない」との一点張り。一度けんかになり、「それなら、施設に入れ」とマサオさんが怒鳴ったところ、母親は「親を捨てる気か」と泣き出しました。