驚きの性能「M1版MacBook Pro」9つの快挙と2つの不満

買うべき人、待つべき人の結論も出た
西田 宗千佳 プロフィール

過度な期待は禁物だが

M1版Macでは、iOS・iPadOS向けのアプリも動く。

同じARM系アーキテクチャであり、OS的にも構造を工夫することで、iOS・iPadOS向けアプリが動くようになっているのだ。これも大きな可能性を秘めている。アプリの数が一気に増えることになるからだ。

【写真】iOS・iPadOS用アプリをいくつか動作させてみるiOS・iPadOS用アプリをいくつか動作させてみた。「ビックカメラ」アプリ(左)も、ゲーム「風来のシレン」(右)も動作する(ただし、画面サイズは固定)。中央の動画編集ソフト「LumaFusion」は、ウインドウサイズを自由に変えられる

ただし、現時点では過度な期待は禁物だ。

Macへの最適化が弱く、動作確認も進んでいないからだ。動くには動いても、画面サイズや文字サイズが変えられないために使いにくかったり、タッチパネルを前提としたUIであるためタッチパッドでは使いづらかったりもする。

そもそも、すべてのiOS・iPadOS向けアプリが、Mac向けに公開されているわけではない。ゲームの一部や動画配信アプリ、Google系のアプリなどは、まだMacに対応していない。

便利ではあるが、まだまだ進化途上の機能と考えるべきだろう。

「圧倒的な完成度」に、他社はどう動く?

「M1版Mac」を初めて操作してみての率直な感想を最後にまとめておこう。

M1版MacBook Proは、素晴らしい製品だ。同じような価格・サイズ・重さで、ここまで快適なノートPCは現状では存在しない、といっていい。

唯一のライバルは、同じ「M1版Mac」であるMacBook Airくらいだ。実のところ、性能面におけるAirとの違いは「ほとんどない」状態になっている可能性が高く、若干高価で重いProを選ぶ理由がどこにあるのか、さらに微妙なところになってきている。

ただし、両者の詳しい違いについては、Airの実機を試用できていない筆者には、正直まだわからない。Proを選ぶ理由は「バッテリー動作時間と発熱の低さ」になりそうだ、と予想してはいるが……。

もちろん、Windowsからの移行は大変だろうし、インテル版Macとは異なり、「仮想マシンを使ってWindowsをMacの中から動かす」のも、現状ではできない。

もっと高性能なGPUが必要になっても、外部接続することはできないし、メモリーも16GBが上限だ。メモリーは8GB/16GBでもかなり快適に使えそうな印象を受けるが、巨大なグラフィックデータを扱うプロのワークフローに耐えられるかどうかは、まだ検証が済んでいない。

インテル版では端子の数だけ外部ディスプレイをつなぐことができたが、M1版では端子数にかかわらず、外部ディスプレイは1つしかつなぐことができない。多くの人にはこれで大丈夫だろうが、プロ用途では不満を感じる人もいるはずだ。

そうした事情をふまえると、現時点での結論は「ノート型のMacを一般的な用途に使っている人」は文句なくM1版に乗り換えられる、というものだ。そうでない人は、ある程度検討が必要だろう。

どちらにしても、これだけの高性能版Macをアップルが出してきたことは、他社にとってはある種の脅威だろう。インテルやAMDなどのCPUメーカーはもちろん、Windowsを提供しているマイクロソフトにとってもだ。

マイクロソフトはx86版だけでなく、ARM版プロセッサーで動くWindowsも出しているが、今回のAppleシリコン版macOSほどの完成度には至っていない。

アップルが初手から放った衝撃が他社にどう影響し、新しい競争を生み出すのか──。M1版Macの性能だけではなく、その点にも注目しておきたい。