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フランス「斬首事件」の深層とは? 日本人が知らない「厳しすぎる現実」

ムスリムとの共生に必要なもの
フランスで10月、斬首事件が起きた。これはフランス社会とムスリムとの対立が原因なのか。実は想像以上に複雑な背景があった。『ライシテから読む現代フランス』などの著作がある伊達聖伸・東京大学准教授が論点を解説する。

前回記事はこちら:なぜフランスで「残酷な斬首テロ事件」が起きたのか、その「複雑すぎる背景」 

親イスラーム的左派への猛バッシング

表現の自由やライシテを大義名分とするイスラモフォビア(イスラーム嫌悪)が現代フランス社会にあることは、否定しがたい。そうした差別の犠牲となったムスリムを法的に支援する団体に、「フランスにおけるイスラモフォビアと闘う団体」(CCIF)がある。

CCIFは、2004年のヴェール禁止法や2010年のブルカ禁止法の制定に反対してきた。フランス社会の偏見と闘う一方で、世論からはイスラーム過激派の「トロイの木馬」ではないかと厳しい眼差しにも晒されてきた。

CCIFのデモの様子〔PHOTO〕gettyimages
 

今回の事件で、サミュエル・パティの授業を告発する動画を拡散したブライム・Cは、この団体に相談を持ちかけていた。ダルマナン内務大臣は、CCIFを「共和国の敵」と名指して、解体を主張した。これに対してCCIFは、弁護士・法律家集団である自分たちが「テロ礼賛」などもってのほかと反論している。

国民教育大臣のジャン=ミシェル・ブランケールは、「親イスラーム的左派」を槍玉にあげた。フランスの左派には、宗教批判を身上とする左派と、マイノリティの権利を擁護するリベラルな左派とがあるが、教育大臣は後者の態度がイスラーム過激派の増長を許したとして、その責任を追及しようとしたのである。

「親イスラーム的左派」は定義も範囲も曖昧だが、今回厳しい世論の攻撃対象となったのは、急進左派政党「屈しないフランス」や人権連盟、ニュースサイト『メディアパルト』や「ライシテ監視機構」などである。『メディアパルト』の創設者エドウィ・プレネルは、ムスリムに対して差別的なフランス社会を批判する視点を持った言論人である。