しかしながら、これは、いわゆるキャリア・アップの転職を目指したものではないので、権威付けのために学位や資格を取得することにほとんど意味はない。経営幹部以外で、シニアになっても企業から求められる人材というのは、権威がある人ではなく、これまで得てきた現場のノウハウを言語化したり、体系化できる人である。
技術系の分野では、経験がモノを言うケースが多く、業種が違ってもシニア人材が重宝されることが珍しくない。だが、この話は必ずしも技術系のビジネスパーソンだけに限定されるわけではない。
営業、総務、経理などいわゆる事務部門の仕事であっても、経験というのは非常に重要である。自身がこれまで行ってきた仕事を体系化し、各種ノウハウを一般的なマニュアルにまとめ、若手に具体的にアドバイスできる能力があれば、多くの企業が、アドバイザー的な役割を求めてくるだろう(上から目線で教えようとする人には、ほとんど声はかからないと思った方がよい)。

後半戦のキャリア構築に向けたスキルアップというのは、このような方向性を目指すべきだと筆者は考える。公的な資格を得ることはできなくても、プレゼンスキルや資料作成スキルを磨く講座を受講する方が圧倒的に効果的な可能性もあるし、人によっては対人コミュニケーションの学習が必要かもしれない。
会社側が認めるのかどうかはそれぞれということになるが、空いた時間を副業に充てるというのもひとつの考え方である。実際に副業をやってみることで、自分の市場価値がいくらなのか理解できるし、具体的な課題もハッキリしてくるだろう。筆者は起業した経験があるので断言できるが、実務を通じた経験というのは、どんな資格や学位よりも威力を発揮する。