有効率90%超えに期待が集まる新型ワクチン
新型コロナウイルスの勢いが止まりません。
昨年末に中国・武漢でアウトブレイク(集団発生)した新型ウイルスは瞬く間に世界に伝播し、21世紀初のパンデミック(世界的大流行)を起こしました。普通のコロナウイルスが引き起こす鼻風邪は、春頃になると流行が収束するため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も夏頃になれば落ち着くとの楽観的な見通しもありましたが、勢いこそ衰えたものの、流行は収束しませんでした。
それどころか北半球が冬を迎える11月になると、欧州やアメリカでは第3波が襲い、感染者数、死者数とも右肩上がりに伸びています。
近著『新型コロナ 7つの謎』(講談社ブルーバックス)の中では、10月末の全世界の感染者数を4300万人、死者数を110万人と書きましたが、それから2週間足らずで、感染者数は5530万人、死者数は133万人にまで増えました。感染者数は1日で100万人ペースで増えており、いったいいつ収束に向かうのか、現時点ではまったく見通しがたちません。
こうした状況にもかかわらず、株式市場は日米とも活況で、NYダウは史上最高値を更新し、3万ドル目前です。日経平均も年初来高値を連日更新し、11月16日には実に29年ぶりの高値をつけました。
コロナ禍にあえぐ企業が多いなか、市況が活況を呈するのは不思議な気がしますが、きっかけを作ったのがCOVID-19向けワクチンをめぐる1本のニュースでした。
米製薬大手ファイザーは11月9日、独のバイオベンチャーのビオンテックと共同開発するワクチンが、臨床試験(治験)で感染を防ぐ有効率が90%を超えたと発表しました。これを後追いするように、 米製薬企業モデルナは11月16日、同社が開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、94.5%の予防効果がみられたとする臨床試験の暫定結果を発表しました。
驚いたことに、ファイザーは11月18日、最終分析での予防効果が95%に達したと発表しました。数日以内に米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請する見込みで、緊急承認されれば年内にもワクチンが実用化される見込みです。

これらの発表は、日本でもNHKをはじめ、マスメディア各社が軒並み取り上げ、新型コロナワクチンには90%をこえる予防効果があると報道しています。
マスコミが大騒ぎするのを見て、「やっと安心できる」と思った方も多いでしょう。インターネットの反応を見ていると、「予防効果が90%をこえるというのだから、ワクチンを打てばマスクや3密回避なんて不要」と早合点した人も少なくないようです。実はこの報道には、2つの点で大きな問題点があるのです。順に説明していきましょう。