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仮設に一人残されたおばあさんが心配で、成仏できないおじいさんの霊

津波が生んだ霊体験⑩
宮城県の古刹・通大寺では、人間に「憑依」した死者を成仏させる「除霊」の儀式が今も行われている。30人以上の霊に「憑依」されたことのある高村英さんと、その霊を成仏させた通大寺の金田諦應住職。二人に取材を続けてきたノンフィクション作家の奥野修司氏が、前回に続いて高村さんの体験を聞く。

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霊を拾う

高村さんは、3体の霊をいっぺんに除霊してもらってからしばらく寝込んでいたが、5日ほど経ってようやく熱も下がったのでレンタルビデオ店に行った。ところが、店内ですれ違った人に憑いていた霊を拾ってしまったのだという。男性と女性、それにおばあさんの3人だった。慌てて金田住職に電話をしたが、このときは通大寺に行かず、電話を通して読経してもらい、高村さん自身が自分で除霊したという。

「霊を拾う?」

お墓に行ったら霊がついてきたという話は聞くが、なぜレンタルビデオ店でいとも簡単に霊を拾うのだろう

「あの当時は被災地巡礼みたいなのが流行っていて、全国各地から被災地を尋ねる人が跡を絶たなかったんです。霊は自分が亡くなった場所や、遺体が見つかった場所から動けなくなっていることが多いのですが、そういうところを訪ねた方に憑き、その人が町中にやって来たらまた別の人に憑くという具合に、憑く人を転々と変えながら、最終的に私のところにたどり着いたみたいです」

「まるでヒッチハイクですね」

「そうです」と高村さんは笑う。

「それを拒絶できないのですか?」

「今までは出来たり出来なかったりでした。子供の頃から霊を拾うのは普通のことだったし、拾ったところで私に影響を及ぼすような霊に出会わなかったので、それほどリスキーではなかったのです。20歳を過ぎてからコントロールできるようになって、リスキーな霊は拾わないように、寄せ付けないようにしていました」

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「レンタルビデオ店で拾った霊は、自分で外に出せる霊だったんですか?」

「以前は憑いても自分で除霊できたのですが、津波の霊たちが押し寄せてきてからできなくなって、それで住職さんのところに駆け込んだわけです。それが以前のように、だんだんと自分でも出せるようになっていました」

「自分でお祓いをするときはお経を読むんですか?」

「ええ、お経は消災妙吉祥陀羅尼でしたが、住職さんから諸仏光明真言灌頂陀羅尼がいいよと教えてもらってから、今はこの2つを読んでいます」

「それにしても、なんで次々と霊が憑くんですか?」

すると高村さんは「わんこそばみたいなものです」と笑った。椀に入ったそばを食べると、さっと横から新しいそばを入れられるように霊が入ってくるのだという。高村さんによれば、体が受け入れられるキャパシティーは「通常3~4人ですが、10人くらい憑依されても平気です。ただ、そこまで増えるとコントロールができなくなる」そうだ。除霊でいなくなった霊の代わりに新しい霊が入ってきても、嫌なら蓋をすればいいのだが、津波の霊たちのときは、なぜか蓋ができなくなっていたという。