管理職になりたい女性が少ない理由

ここまで、女性が男性に比べて圧倒的に長い時間を割いてケア労働を担い、このことがキャリアの構築を困難にしているという現実を様々な数字から示してきたが、私がここで強調したいのは、問題の本質は単純な数字の話ではないという点だ。

まずこの不均衡な現実について度々指摘されるのが、女性の意識についてである。21世紀職業財団が2015年に公表した「若手女性社員の育成とマネジメントに関する調査研究」の中の入社10年目までの若手社員を対象とした調査では、「管理職になりたいか」という質問に「なりたい」と答えた割合は、男性が48%なのに対し女性は14%に留まっていた。また、将来のキャリアに不安があると答えた割合は、男性が25%なのに対し女性は59%にも上った。

菅内閣において女性閣僚の少なさが問題視された際、ネットでは「そもそも政治家になりたい女性が少ないのでは」という指摘もあった〔PHOTO〕Getty Images

このような性別による意識の差をキャリアの構築に対する女性元来の志の低さと解釈し、その志の低さがキャリアの構築を妨げているとの指摘をたびたび目にする。しかし、そう思う人は考えてみて欲しい。

会社で、通常の仕事とは別に15年もの間、全身全霊で取り組むべき特別なミッションを与えられている人がいるとする。その人が、この「15年ミッション」がない人と同様に通常のさまざまな仕事に意識を回すことができるだろうか。また、意識を回せたとしてその先に、「15年ミッション」がない人と同様のキャリアをイメージすることができるだろうか。

実際に、上記の意識調査における若手女性社員がキャリアへの不安を感じる理由の上位には、「育児や介護などで時間制約のある人は昇進するのが難しい職場であると思っていること」が挙げられている。人生のどこかの段階でキャリアとは別のケア労働に男性より遥かに多くの時間を割くことが決まっているかのような社会の中で、自身のキャリアの未来をイメージすることが簡単であるはずがない。この困難さが、女性元来の志の低さに起因しているなどという解釈はあまりに現実から離れていないだろうか。