女性を夢の実現から遠ざける「無給の労働」

それでも米国ではこの1時間半という差が社会問題として重要視されている。例えば、ビル・ゲイツ氏と共に世界最大の慈善基金財団であるビル&メリンダ・ゲイツ財団を運営し、女性差別の撤廃に向けた活動も積極的に行っているメリンダ・ゲイツ氏は、Business Insiderの記事の中で、この1時間半という時間を人生という単位で換算すると女性が男性より7年以上多くケア労働に従事している計算になる点を指摘し(1日8時間の労働時間で40年働くと仮定すると、1日1時間半の労働は約7.5年分に相当)、学士号と修士号の取得にかかるのと同等の時間を割くこの「無給の労働」が女性を夢の実現から遠ざけていると述べている。

この「無給の労働」についての問題点は主に2つある。1つは、家事育児といった極めて重要な労働が「無給」の状態にあるなど社会から評価されていない点。そしてもう1つは、女性のほうが男性より圧倒的に長くこの「無給の労働」に従事しているという点で、日本ではこの2点めが特に際立った状況にある。

上述のように、米国の夫婦間の約1時間半という家事育児関連時間の差は、人生という単位で換算すると約7.5年分の労働に相当するが、関連時間の差が米国に比べ約2倍である日本では、女性が男性より約15年分も長く「無給の労働」に従事していると換算できる。

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15年という時間は、例えば研究者の典型的なキャリアパスで考えると、学士号・修士号・博士号を全て取得し、さらにその後に5年程度研究者として働くという長さである。研究者の中には、この15年の間にキャリアのハイライトとなる結果を出している人も少なくない。つまり、女性が男性同様のキャリアを築くには、この15年分多いケア労働を行いながら、それに対する評価が得られない中で、本業にも最大限の取り組みをする必要があるということである。

実際、内閣府の発表した「男女共同参画白書」によると、平成29年の男性の就業率は83%だったのに対し女性は66%。非正規雇用の割合は男性の22%に対して女性は56%であった。また、女性の出産後の就業継続率は約5割に留まっていた。さらに、東京商工リサーチによる「2019年3月期決算上場企業2,316社『女性役員比率』調査」で報告された女性の役員比率はわずか5%であった。これらの数字は、女性がケア労働を過剰に担いながらキャリアを築いていくことの難しさを明示している。