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両親の「恐怖の表情」が忘れられない…私が「怖い」に魅かれるワケ

子どものころ、夢遊病を発症し…

幼少期に発症した「夢遊病」

幼いころ、田舎の祖父母の家が怖かった。

お線香の匂いが天井や畳に沁み込んでいるような薄暗い仏間には、鴨居の上に亡き先祖の白黒写真がずらりと並び、こちらを見おろしてくる。

襖一つ隔てた隣室には年代物の箪笥の上に黒ずんだ日本人形やぬいぐるみがいくつも置かれ、やはりじっと見つめてくる。

それらは過去を背負い、埃を吸ううち、何か別の生きものと化して、今にも動きだしそうだった。

ほぼ同じ時期だったと思うが、筆者は夢遊病を発症した。

新著『中野京子の西洋奇譚』にも書いたが、時々夜中に寝床から起き出してパジャマのまま外を歩いていたらしい。

自分では全く何も覚えていない。

覚えているのは、ある夜、背後から大声で名を呼ばれ、振り返ると、見たこともない恐怖の表情を浮かべた両親がいた。靴を履き、手が玄関の戸にかかっていることに、そのとき突然気づいた。

 

後日、母が言うには、片付けたはずの靴が出ており、玄関の鍵も開いているのに少し前から気づき、医者に相談して寝ずの番をしていた、子供にたまに起こることで心配はいらない、もう大丈夫、と。

母の励ましのおかげか、それ以来、夢遊病は収まった。