「古山さん。譜面通りに歌えれば、それでいいと思っていませんか? 大切なのは、そこから先でしょう? あなた、本当にミミを演じる覚悟があるんですか?」

11月27日に最終回を終えたNHK朝の連続テレビ小説『エール』。オペラ「ラ・ボエーム」の稽古場で、声楽界のエリートゆえに、実力不十分の二階堂ふみ扮する古山音に思わず詰め寄るオペラ歌手を覚えているだろうか。気鋭の声楽家・伊藤幸造役を堂々と演じたのは、俳優の海宝直人。これまでも『レ・ミゼラブル』『ライオンキング』『アラジン』など、誰もが知る著名なミュージカルで主要な役を務めてきた。

海宝直人は32歳にして、今年で芸能生活25周年を迎えた。自身の長いキャリアを振り返りながら、朝ドラ『エール』のこと、俳優としてコロナ禍で感じたこと、これからの未来について、たっぷりと語ってくれた。

海宝直人(かいほう・なおと)1988年、千葉県出身。7歳のときに劇団四季のミュージカル「美女と野獣」チップ役で舞台デビュー。その後、劇団四季「ライオンキング」の初代ヤングシンバ役を務めた。主な出演ミュージカルに「レ・ミゼラブル」、劇団四季「アラジン」「ライオンキング」「ノートルダムの鐘」など。また自身がボーカルを務めるロックバンド・シアノタイプが2018年にメジャーデビュー。2019年にはソロとしてウォルト・ディズニー・レコードよりデビューを果たす。12月2日にセカンドアルバム「Break a leg!」をリリース。
-AD-

先輩俳優の朝ドラ出演を祝っていたら…

――まずは、朝ドラ『エール』について伺います。出演された11月4日の放送は、実力派オペラ歌手同士の朗々とした掛け合いのシーンが印象的でした。オペラ歌手を演じるにあたって、役作りはどのようなことに気をつけましたか?

今回出演させていただいて驚いたのは、朝ドラの本番までに1ヶ月以上も準備期間があったことです。その間に、オペラ考証の先生なども交えながらNHKに何度も通って、出演者で音合わせができました。

掛け合いのシーンがある八田武役の田中俊太郎さんは、声楽で東京芸術大学の博士課程を出られた方です。僕の演じた伊藤幸造役がまさに田中さんの経歴と重なるため、同じ事務所の所属でもある田中さんのお宅にお邪魔して、オペラとミュージカルの歌唱の違いをはじめ、イタリア語も一から教えてもらいました。肩書が『東都音楽学校主席』という役柄で、歌唱に関して一定以上のクオリティが必要だったので、きちんとレッスンをして臨みましたね。

――『エール』の撮影現場では、率直にどんなことを感じましたか?

『エール』の現場は、舞台で稽古をしているような感覚でした。シーンを細かく割らずに、台数の多いカメラが様々な角度から出演者を狙っていて、丸ごとシーンを通すイメージです。リハーサルも含めて、すごく丁寧な作り方でした。

――俳優仲間の方からも、『エール』に出演されたことで、たくさん声をかけられたと思います。

『レ・ミゼラブル』でご一緒した吉原光夫さんが放送を観て『良かったよ』と連絡してくださいました。

以前、光夫さんと橋本じゅんさんと僕の3人で歩いていた時に、光夫さんの『エール』出演が決定したことを教えてもらいました。3人で本当に喜んで「おめでとうございます」なんて話していたら、そうこうしているうちに、僕もオファーをいただけて…。嬉しかったですね。

実際に現場に行ってみると、一緒にお祝いをしていた橋本じゅんさんも同じシーンだったんです。そういう俳優同士の縁もすごいなと感じました。完全に外野の人間として光夫さんの出演を喜んでいたのに、まさか同じ朝ドラに出られるとは。吉原光夫さんとは、本当に縁が深いんです。今回は、僕の朝ドラデビューを光夫さんが見届けてくれましたけど、劇団四季での光夫さんの『ライオンキング』ムファサ役デビューは、僕が子役時代に見届けましたから(笑)。