直木賞を受賞した桜木紫乃さんの小説を、波瑠さん主演、武正晴さん(『百円の恋』『全裸監督』)を監督に迎えて映画化した『ホテルローヤル』が公開中だ。

昭和の終わり、北海道の釧路湿原を望む高台にあるラブホテル「ホテルローヤル」が舞台。主人公の雅代(波瑠)は美大受験に失敗し、不本意ながらも家業であるホテルを手伝うことになる。アダルトグッズ会社の営業・宮川(松山ケンイチ)への恋心を秘めつつ、仕事を黙々とこなす雅代。母親のるり子(夏川結衣)は酒屋の配達員と密会を重ね、甲斐性のない父親の大吉(安田顕)はパチンコ三昧で家に寄り付かず、夫婦仲は冷え切ったままだった。

ホテルローヤルには「非日常」を求めてさまざまな人が訪れる。投稿ヌード写真の撮影をするカップル、子育てと親の介護に追われる夫婦、親からネグレクトされた女子高生と妻に裏切られた高校教師……。そんな中、一室で心中事件が起こり、ホテルはマスコミの標的に。さらに大吉が病に倒れ、雅代はホテルと「自分の人生」に初めて向き合っていく――。

『ホテルローヤル』より

本作の撮影は全て北海道で行われ、ホテルの窓には釧路平野の雄大な光景が広がる。ラブホテルを舞台に親子や夫婦、そして働く人たちの姿が丁寧に描かれ、最後にホロリとさせられる秀作だ。

力強く生きる女性像を多く描いてきた武正晴監督が、主人公・雅代の生き方に込めたメッセージとは。

「そのこと」が書いてある小説を初めて読んだ

――ベッドの上で主人公の雅代がずっと好きだった宮川に、「奥さんのこと、考えたでしょう」と言うセリフがきっかけで映画化しようと思われたそうですね。

武正晴監督(以下、武):行為の最中に別の女性のことを考えて上手くいかなかったことって起こり得ることだと思うのですが、そのことが書いてある小説を初めて読んだんです。しかも、女の人が書いているということが衝撃でした。女性も、男性のそういう面を見抜いているのだな、と。

普段みんなが公言できないことを書けるから作家なんだな、と改めて思いました。そして、それを映像にできることが映画の面白さでもある。

『ホテルローヤル』より

――本作はラブホテルが舞台ですが、性愛そのものがテーマではなく、親に無視された女子高生と教師の関係など、人間ドラマを描いていると感じました。

武:この物語には雅代以外にも、さまざまな“主人公”がいますが、女子高生もその一人。伊藤沙莉という非常に才能のある女優が演じてくれました。原作には、女子高生がホテルで教師と過ごし、やがて待ち受ける悲劇について綴られているんですが、そこに至る背景についてはあまり詳しく描かれていないんです。彼女のような状況にある子を救いたいという思いから、映画では親との関係なども肉付けさせてもらいました。