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日本初の「凍結受精卵」による出産成功から今日で31年

サイエンス365days

"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

凍結受精卵による出産、世界初から5年で日本でも

1989年の今日(12月25日)、東京歯科大学市川総合病院で、日本で初めて「凍結受精卵」を用いた方法で妊娠した赤ちゃんが誕生しました。

体外受精は主に薬によって母体の卵巣を刺激して排卵直前に成熟卵を採取する方法で実行されます。このときに採取された卵子のうち、いくつかは体外で受精させ、卵巣に戻します。一方で、残った卵子は廃棄されるのではなく、凍結保存されるのが一般的です。これが凍結受精卵です。凍結受精卵を保存しておくことにより、もしも体外受精が成功しなかったときに一種の保険として機能するのです。

凍結受精卵は液体窒素などを用いて保存されている Photo by Getty Images

凍結受精卵は、体外受精が成功しなかったときに、一定期間内であれば利用することができます。これによって、母体が再び投薬によって卵子を成熟させる必要がなくなり、最適な時に凍結受精卵を解凍させることで受精卵を体内に戻せるのです。

そうした利点から、1980年代までに受精卵の凍結保存、また凍結受精卵による出産の研究が進み、1984年にオーストラリアで初めての出産がありました。そして、日本でも慶應大学教授の飯塚理八(1924-2006)などにより研究が進められ、1982年には日本受精着床学会が結成されました。

 

1983年には東北大学医学部付属病院で日本で初めての体外受精による出産が成功しました。そして1989年に、市川病院と慶應大学医学部のチームが凍結受精卵の着床・出産に成功したのです。

市川病院は日本で二例目の体外受精による出産を成功させた病院でもあり、慶應大学医学部チームの中心人物は飯塚理八でした。体外受精技術の進歩に長年取り組んだ人々の努力が結実したのです。

一方で凍結受精卵には、倫理的問題も残されています。アメリカでは、離婚後に凍結受精卵を用いて出産しようとした元妻とそれを望まない元夫の裁判の例などもあります。生命科学の進歩によって生じる新しい課題をどのように乗り越えてゆけばよいのか、単なる技術的問題にとどまらない科学との付き合い方が求められています。