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中国共産党が「香港」を本気で蹂躙し始めた…「議員罷免」のウラで起きていること

民間人にも次々と影響が及んでいる

香港の人々の不安

香港国家安全維持法(以下、国家安全法)の施行からすでに4ヶ月が経った。この間の香港の変化を見て感じるのは、「国際的な大都市がこれほどいともたやすく壊れていくものなのか」という驚きである。

筆者はかつて、「世紀の大イベント」と言われた1997年の香港主権返還まで10年間の過渡期を現地で観察し、現地の変化を体験した。当時はSNSこそなかったものの、人々が希望や不安を口にすることが禁じられることはなかった。政府レベルで着々と進む返還への準備に、「言ってもせんないこと」と敢えてそれを口にしない人は確かにいたものの、社会において不安を封ずる動きはまったくなかったし、処罰なども当然存在しなかった。当時の人々は不安を心に抱えつつも希望を見出そうとしていた。

だが、国家安全法の施行後、次々と起こる前代未聞の出来事と、これまでの常識を翻す政府の対応に、香港市民は恐怖から不満の声すら上げられなくなっている。メディアが伝える記事にも昨年たびたび叫ばれた「五大要求」や本土派が掲げたスローガンは見当たらない。政府がきっぱりとそれらを「国家安全法に反する」と断じたからだ。

行き場のない人々の不安はこの秋、米国大統領選に向けられた。なんと、昨年街に出て五大要求を叫んでいた人たちが「トランプか、バイデンか」で対立したのだ。強硬な中国封じ込み政策を続けるトランプ現大統領の再選を望む人たちは、それでも理性や自由、多様化を求めるバイデン氏支持者を「左膠」(「教本通りの理想社会にこだわる連中」という意味)を罵った。

大統領選を報じる香港紙〔PHOTO〕Gettyimages
 

もちろん、ほとんどが投票権をもたない「場外乱闘」ではあるが、米国のトランプ支持派もどきのフェイクニュースを香港で流布させる人たちの出現は、「死なばもろとも」とまで言い切ったかつての香港民主活動家たちの行き詰まりを示すものともいえる。

加えて、11月11日午前、中国北京で開かれていた全国人民代表大会常務委員会(以下、全人代常務委会議)において、「『香港基本法』を擁護せず、香港特別行政区への忠誠という条件を満たさない者は立法会議員の資格を失う」ことが決定され、香港政府はこれを受けて即時に4人の民主派立法議員の罷免を宣言した。