2019年10月、神戸市で悲しい事件が起きた。介護に疲れた22歳の幼稚園教諭が、5月から同居し、つきっきりで介護していた祖母を殺害したのである。殺人罪に問われた元幼稚園教諭は、2020年9月、神戸地裁から懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役4年)を言い渡された。しかし、裁判で明らかになったのは、22歳の孫娘が置かれた過酷で孤独な介護の現状だった。

立命館大学法学部教授の二宮周平氏が、毎日新聞2020年10月28日の配信記事をはじめとした報道をもとに事件の背景を解説、誰かひとりに押し付けられたり、女性が任されたりすることの多い「家族と介護」の問題点を明確に伝える。

22歳の女性が祖母を殺めたある事件 

幼稚園教諭だった22歳の女性が介護疲れから祖母を殺めた事件が発生した。その背景は以下の通りだ。

祖母が転倒し入院、アルツハイマー型認知症と診断され、排泄や身の回りのことが1人でできないため要介護4と認定された。
祖母には徒歩5分以内に住んでいた子が3人いる。子らは、祖母を1人で家に置いておくのは危ないと判断し、孫にあたり、親とは死別しているこの女性に祖母と同居させ、介護させた。長男(女性の伯父)は自営業が忙しく、二男(女性の父)は手足がしびれる病気、長女(女性の叔母)には小さな子どもがいたためである。

女性は2019年に短大を卒業し、夢だった幼稚園教諭として働き始めたばかりだった。祖母は平日はデイサービスに通ったが、夜間や土日は女性がつきっきりで介護、睡眠時間は2時間ほどだった。 

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そして3ヵ月後、女性は、疲労や重度のストレスから腎臓が悪化し、重度の貧血に、さらに「軽いうつ病」と診断され、医師から退職か休職を勧められた。それでも子らは自分の母親の介護を女性に任せきっていた。