オードリー・タン「強制のない社会、安心できる社会のために」

オードリー・タン 自由への手紙(10)
語り)オードリー・タン,  構成)クーリエ・ジャポン プロフィール

安全な居場所から思いやりは生まれる

ただし、変革を起こすためには、居場所が必要です。

自分がいる環境に守られていること。安全だと感じる場所をもつこと。これが何よりも大切なことです

オードリー・タン氏 Photo: Medialab Prado / Flickr
 

もしも自分に居場所がなかったら?

もしも自分の安全が担保されていなかったら?

人は他者を受け入れようとしなくなる。これはごく単純な人間の性(さが)です。

もしも私の家にカウチがなかったら、「カウチサーフィン」と呼ばれる民泊コミュニティを歓迎することもないでしょう。

至極、当たり前のことです。

新型コロナウイルス対策を講じる際も、「安全な居場所」という舞台づくりからはじめました。

医療用マスクの輸出を始めたのは2020年6月のことですが、その後、1日当たり200万枚だった生産量を1日当たり2000万枚にまで引き上げました。

必要十分なマスク生産量が確保できたところで使用制限を撤廃し、世界中の人道支援団体にマスクの寄付まで行うようになりました。

これは「台湾には十分なマスクがある」と人々が思えたから、実現したことです。自分の居場所で安全が担保されたから、他者を受け入れ、思いやることができました。

しかし、マスク増産態勢が整うまでの2~3ヵ月間、状況は異なりました。

「十分なマスクがありません」

「必要な資源がありません」

「申し訳ありませんが、ほかを当たってください」

そう伝えて、私たちはマスクの使用制限をし、人々はそれに従った。これはごく当然のことだと思います。

翻って考えれば、自分の居場所があるかぎり恐れることはないということ。

私が目指すのは、「強制から解放されたアナキズム」。

居場所さえあれば、どんな変革も、強制や排除なしに起こせるはずです

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