マンガ/伊藤理佐 文/FRaU編集部

「ごめん、飲んできちゃった」

連絡ひとつ入れてくれればいいのに、なぜ「ごめん、飲んできた」と事後報告で帰ってくるのか。同居している恋人や配偶者のことをそんな風に思ったことのある人は意外と多いのではないだろうか。

ではその恋人や妻(夫)があなただとして、そんなとき、その彼(彼女)が帰ってきたらあなたはどうするだろうか。

確かに同居してたって大人同士それぞれ忙しいわけで、毎晩の行動を報告しなきゃいけないってことはないかもしれない。でも相手が一緒にご飯食べようと思って待っているかも、料理を作っているかもと、そんな想像力が働いたら、ひと言入れるのは普通のことじゃないだろうか。そんな風に考え始めると、そういえば私が遅くなる時は必ず連絡を入れるし、ともすると朝のうちにご飯を作っていったりもするのに、彼は自由気ままなのってなんでだろう? 「ごめん、飲んできた」って、ごめんっていうくらいなら悪いと思ってるのになんでその前にひと言の連絡もしないんだろう? なんて思い始めてしまったりもする。

(c)伊藤理佐/講談社『おいピータン!!』16巻より

小さいお子さんのいる共働き家庭で、「妻が遅くなる時は朝のうちに夕飯まで作って全部セッティングして申し訳ないといいながら仕事に行くけど、夫は一切それがなく、たまに早く帰ってお迎えをするだけでイクメンと言われる」なんて事例も多いことだろう。

そんな題材を漫画にしているのが、伊藤理佐さんの『おいピータン!!』16巻第1話の「蚊」である。

「蚊の正体」とは…

伊藤理佐さんのマンガ『おいピータン!!』は、20年以上続いているオムニバスショート漫画だ。手塚治虫漫画賞短編賞など多くの賞を受賞している名作で、現在は主人公のある事情につき『おいおいピータン!!』と名前を変えて「Kiss」で連載が続いている。描かれているのは、「食」を中心のテーマとしながら、日ごろ我々がモヤモヤしていることや、ドキッとするような事柄ばかり。そうそう、あるある!と思いながら、ムカッとしたことも笑い飛ばすことで、なんだか最後はすっきりすることができるのだ。あまりに人生のあるあるが見事に描かれているので、20年の蓄積の中から厳選し、「おいピータン!!人間学」という連載で試し読みをご紹介させていただいている次第である。

さて、その16巻「蚊」の主人公は、女性が蚊のとまっていた男性の頭を思わず叩いたことで交際が始まり、結婚した若いカップルである。妻はいつもニコニコしていて、怒ったことはない。しかし、大事なときに「蚊」が出てくるのだ。妻が掃除をしている横で夫がテレビや本でダラダラしている時。「ごめん、つい飲んじゃって」と帰ってきた時。「蚊って最近は一年中出るんだってね」と言いながら、妻は「蚊」を叩く。

(c)伊藤理佐/講談社『おいピータン!!』16巻より

しかしあるとき、夕食中に妻が「蚊」を叩いて、夫は「蚊の正体」に気づく……。

そこに描かれている妻は、実は「ただニコニコして怒らない妻」ではなかった。モヤモヤしていること、相手にムッとしたことをため込むでもなく、かといって嫌味をいうでもなく、ユーモアを含めて上手に相手に怒りを伝えることのできる、チャーミングな女性だったのだ。

なるほど、こうすれば、ムッとしていることを相手に逃げ道を与えながらもきちんと伝えられるかもしれない。たしかに、夫が何も言わずに飲んできたり家事を任せっきりにしているのは、妻を軽んじているからではなく、単に甘えているだけかもしれない。そして、それを嫌だときちんと伝えることで、二人の間のモヤモヤは改善されるかもしれない。

妻は季節外れの蚊を使って何を伝えたかったのか。ぜひ無料試し読みを楽しんで、それぞれにとっての「蚊」を見つけてみていただきたい。