# 日本経済

最低賃金の「引き上げ」で、じつは日本が“米国並み”の「超・格差社会」になる!

菅政権が語っていないこと
中原 圭介 プロフィール

差し引きでプラスかマイナスか、よく考えること

2012年時点のアメリカ政府の公式見解では、アメリカ人の6人に1人は貧困層、3人に1人は貧困層および貧困層予備軍に分類されています。経済が絶好調といわれたコロナ前であっても、その状況にあまり変化はみられず、格差拡大は史上最悪の水準にあるといわれていました。

いくらアメリカの生産性が高いといっても、それが非正規雇用の割合が6割を占め、生産性を重視して医療費が高騰した結果、4人に1人が病院に行きたくても行けない社会のうえに成り立っているという現実を直視しなければなりません。アメリカの教訓から学べるのは、新自由主義に基づく生産性改革は中間層を没落させ国民の分断をもたらすということです。

アメリカで劣勢とみられていたトランプ氏が大統領選で接戦を演じたのは、国内の分断がいっそう進んでいたからにほかならず、国民の生活水準の落ち込みから見れば歴史の必然だったといえるのかもしれません。

企業が世界中にサプライチェーンを張り巡らすグローバル経済下では、すべての人々に恩恵をもたらす薔薇色の政策は存在しません。何か恩恵があれば、必ず何か副作用が生じるものです。

米国では格差が最上最悪レベルに photo/gettyimages
 

日本は最低賃金をどういう位置づけにしたいのか、最低賃金の過度な引き上げでどの層が恩恵を受け、どの層が負担を強いられるのか、冷静に見極めなければなりません。何が良い点か、何が悪い点か、差し引きでプラスかマイナスなのか、という考え方が欠かせないのです。

幸いなことに、日本は国民の生活水準の格差がアメリカやイギリス、フランス、イタリアのように大きくないので、ポピュリズムが伸長する地合いではありません。これらの国々は日本より生産性が高いということになっていますが、政治の混乱や国民の疲弊を見ていると、「生産性至上主義が本当に正しいのか」と多くの識者に問いたいところです。多くの日本国民には生産性という数字だけに縛られることなく、バランス感覚を持ちながら社会システム全体として考えてもらいたいです。