河合氏(左)と牧野氏(右)

コロナ禍で大注目!「渡り鳥生活」というニューノーマルとは?

定住をやめて手にする贅沢な暮らし
新型コロナウイルスの流行を背景としたテレワークの普及で、住まいのあり方が大きく変容している。通勤地獄からしだいに解放され、人々は都心部ではなく自分たちが住む町へ目を向けるようになった。そんな中、全国各地を渡り住む生活を可能にするサービスが注目を集めている。「全国渡り鳥生活倶楽部株式会社」の代表取締役を務める牧野知弘氏と、『未来の年表』シリーズ著者の河合雅司氏が、「渡り鳥生活」というニューノーマルを語り合った。
 

東京の人口が減少へ

河合 新型コロナウイルスの流行に伴う大きな変化の1つに、東京都の人口が減少局面に転じたことがあります。緊急事態宣言下にあった5月に初めて確認されて話題になりました。7月から9月も減少が続いています。

総務省によれば、7月に続いて8月も4514人の転出超過でしたが、転出先をみると、神奈川県、埼玉県、千葉県といった東京都の隣接県が多数を占めています。特徴的なのは、30代が転入超過から転出超過へと180度転じたことです。

牧野 私も不動産マーケットを長く眺めていますが、ここ最近の急激な変化を感じずにはいられません。神奈川県で不動産業を営む知り合いにも、ここ数ヵ月で中古住宅の空きがないか、売買に限らず賃貸に関しても問い合わせが急増しており、むしろ在庫が無くて困っているほどだそうです。

河合 東京の地価にも異変が起きています。東京都が9月末に発表した都内の基準地価(7月1日時点)をみても、前年比では僅かばかり上昇しているものの、とりわけ銀座といった商業地の下落が著しい。銀座を歩いてみると、飲食店の空き店舗が目につきます。明らかにこれまでとは違う動きです。

牧野 首都圏の商業施設に関しては「西高東低の現象」が起こっていると言えます。若い世代の多い渋谷などと比べて首都圏の東側、たとえば銀座や京橋、日本橋、新橋あたりのエリアの飲食店は未だ不況に陥っている。

というのも東京の東側には大手の上場企業の本社が多く、コロナ禍で会食を禁止しました。その結果が影響しているのでしょう。大手町の飲食も全然回復していません。これは企業の会食自粛の影響だけでなく、社員の多くがテレワーク状態にあることも深く関係していると考えられます。

コロナ禍でテレワークが一挙に普及した(photo by iStock)

コロナ禍で働き方革命が起きた

河合 おっしゃる通り、感染リスクを避けた結果ですね。加えて、コロナ禍で収入が減って家賃の低い郊外へと引っ越さざるを得なかった人が相当数いたこともあると思います。

鉄道各社は終電時間を繰り上げる動きを見せていますし、ポスト・コロナを展望すると、これは一時的な現象ではなく、大都市の在り方の転換点となるように思えて仕方ありません。

牧野 おっしゃる通りです。興味深いのは首都圏の衛星都市、あるいはベッドタウンと呼ばれるようなエリアは割と繁昌しているんです。たとえば武蔵小杉駅前の飲食店は、家族連れで溢れかえっている

河合 人の流れが変わった、ということでしょうか。

牧野 コロナ禍が及ぼした最大の変化は、人々が「分散」を始めたことだと私は考えています。その原動力となったのがテレワーク、あるいはリモートワークの普及です。

あくまで補完的な仕事の方法として位置付けられていたテレワークが、コロナ禍で社会実験的な機会となった。結果的に会社に人が集わなくても生産性は維持できることがわかり、場合によっては従来のやり方よりも会社、社員双方にとってメリットが多いという合意ができた。

河合 国土交通省の「居住地でみた都道府県別テレワーク利用率」という資料をみると、ピーク時の4〜5月で全国平均が25%であるのに対し、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)は38%と突出しています。

感染防止もさることながら、あまりに過密化した東京そのものにストレスを感じている人も少なくありません。政府はデジタル改革を進めようとしていますし、コロナの収束後も東京圏ではテレワークがかなり定着するんじゃないかと思いますね