負けたら「不正」…混乱のアメリカ大統領選は、日本の合わせ鏡である

心理的亀裂が蔓延して
西谷 修 プロフィール

そのせいで「アメリカ」は不純に弱くなり、いい顔をしたがる腐敗政府の下で、「アメリカ人は割を食ってきた」――そう思う「人の好いアメリカ人」は、妥協してアメリカをダメにした「反米」アメリカ人ども(得意の言い方によれば「中国のスパイ!」)から、強いアメリカを取り戻す!

 

不動産屋ドナルド・トランプを大統領に押し上げたのは、「凋落する」アメリカにくすぶるそんな気運だった。「アメリカ・ファースト」「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」の呼びかけが、アメリカに幻想をもちアメリカに依存してきた「世界の良識」を仰天させ、トランプをホワイト・ハウス(白人館?)に押し上げたのである。

警察が黒人を手荒に扱う

だから銃をもってトランプの再選を求める支持は強固である。彼らは当然「排他的」だが、長年その「自由」を抑圧されてきた。そんな被害者意識が妥協・協調への憎悪(ヘイト)に転化し、自分たちの方が差別されてきたという感情を生む。

「白人差別」というわけだ。その「アメリカ人」が、トランプの君臨でホンネを公言する「自由=無法」を取り戻した。

アメリカのいわゆる一般的な保守層は、その気運を利用することにしたのだ。彼らの「ホンネ」を問答無用で押し通してくれるから。一般的なトランプの政策のデタラメさやフェイク発信での国際社会の混乱などは意に介さない。ただ、タイマンの儲けしか視野にないから、火種だけ撒いて武器を売りまくる。そして軍を退く。

外交は混乱するが、「中国敵視」はツボにはまる。アメリカの地位をいつの間にか脅かす中国を悪者にして、経済・軍事の両面から露骨に締め上げる。

習近平国家主席(photo by gettyimages)

MSやグーグルが全世界の情報をかき集めてNASAに貯め込んでも、それは「世界の盟主」アメリカの「自由」だが、他国がやるのは言語道断で、中国は世界の脅威だ。全世界に駐留軍を置き、海も宇宙もコントロールするのはアメリカだけの特権だ。誰にも渡さない――こういう姿勢は「アメリカ国家」のデフォルトだろう。

だが国内では、警察が黒人を手荒に扱う。黒人は邪悪でズルく、無秩序と犯罪の温床だ。「アメリカ没落」の元はそんな黒人や、原住民殲滅に貢献していない雑種たちだ。移民の女は売春婦、金と権力に媚びるもの(西部のカウボーイ世界)、うるさいね「ミー・トゥー」……というわけだ。この4年間、それが「ホンネ」になっていた。

隠れた全力の抵抗が起こる

そんな「アメリカを取り戻す」ヒーローになったのが、トランプだった。本人は政治などやる気もなかったのに、大統領にはなろうとした(名声と全能)。そのトランプの選挙戦を画策して当選させたのが、カルト陰謀論者のスティーヴ・バノンだった。

彼がSNSとPRフェイク情宣でこの「アメリカのホンネ」の波を押し上げ、トランプを大統領の座につけた。すると今度は、ホンネ集団が「自由」を得て、白人至上主義が表舞台に出て、「Qアノン」のような名うての終末・救済カルト、トランプ教団体も生れる。

関連記事