10分でわかる!ノーベル賞を受賞した「オークション理論」って何?

携帯電話の周波数にも関係しています
川越 敏司 プロフィール

「周波数」を適正に割り当てるには

携帯電話は1990年代から普及しました。少し年上の世代は、80年代に自動車電話が使われていたことを知っていると思いますが、90年代に「NTTドコモ」が携帯電話サービスをはじめたことが日本では最初です。

こうした携帯電話事業を進めていくためには、そもそも携帯電話用の電波の周波数を確保しなければいけません。しかし、この電波は、電波法によって国が規制・管理しています。そこで、この周波数を携帯電話事業者にどのように分配するかということが問題になりました。

とくにアメリカでは、当初、国が事業者に聞き取りをして周波数帯の割り当てを行っていたのですが、恣意的で不公平だということが指摘されました。そこで、公平かつ適切に周波数帯を配分する方法としてオークションが利用されるようになりました。

オークションであれば、ある周波数帯を最も必要としている事業者が、いちばん高い値段を付けるわけですから、必要としているところに、適切な価格で、その帯域を割り当てることができると考えられたわけです。

これが「周波数オークション」と呼ばれるもので、結果として大成功したわけです。ここで成功というのは、良質のサービスを提供する事業者に適切に周波数帯が割り当てられる、適正価格で販売されることで政府の収入が増える、といったメリットがあったということです。

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しかし、この周波数オークションの方式をデザインするという問題は、科学的には非常に難しい課題だったのです。というのは、各事業者は複数の周波数帯をまとめて確保しなければ十分なサービスを提供できないため、複数の周波数帯を同時に競りにかけつつ、適切な落札者を決定しなければならなかったからです。この問題を解決する「同時競り上げ式」を生み出したことが、今回のノーベル賞授賞理由の2つ目になります。

実は、先進国の中では例外的に日本でのみ、未だに周波数帯の割り当ては政府による裁量によって決められています。これを機に、日本でも「周波数オークション」をやるべきではないかという声が高まってくるのではないかと思います。

 

このように周波数オークションのような「新しい市場」での販売方式を分析し、さらに新しいオークションの仕組みをデザインする、こういった研究分野は「マーケット・デザイン」と呼ばれ、オークションの他に、最近ではマッチングについてなどの研究が盛んにおこなわれています。

(この記事は、10月14日に函館蔦屋書店で行われた『意思決定の科学』刊行記念講演会をもとに編集したものです)