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「アリババ国有化」の前兆か…習近平政権がアント上場を阻止した理由

史上最大規模370億ドルの調達がパーに

前代未聞の事態

いよいよ明日11月11日は、中国のアリババ(阿里巴巴)が行う世界最大の消費者デー「ダブルイレブン」の日である。

昨年のこの日は、前年比25.7%増の2684億元(約4.2兆円)を、1日で売り上げた。これは楽天が昨年、一年を通じて取り扱った流通総額3.9兆円よりも多い額だ。

リーマン・ショックの不況を活性化しようと2009年に始めたダブルイレブンは、これまで順調に推移してきた。初年は27ブランド、5200万元にすぎなかったが、10年後の2019年は、20万ブランド以上で2684億元。まさに隔世の感がある。

これはひとえに、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)という稀代の革命家が起こした、中国の巨大な市場経済開拓である。アリババがなければ、中国の市場経済は社会主義の中で埋没してしまっていたかもしれない。

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ところが今年のダブルイレブンは、「二つの逆境」に見舞われた。一つはもちろん、新型コロナウイルスである。

1月に武漢でパンデミック(集団感染)が起こって以降、中国の消費は激減した。第1四半期の社会消費品小売総額は、前年同期比で19.0%減。だがそこから持ち直し、第3四半期は+1.7%まで回復した。

これは単純に言えば、昨年まで年間延べ1.5億人も海外(中国は中国大陸以外という意味で「境外」と言う)で「爆買い」していた中国人が、コロナで海外へ行けなくなったことにより、中国国内で「爆買い」を始めたためである。ダブルイレブンがある第4四半期は、さらに消費が伸びるのは確実だ。

さて、アリババにとってのもう一つの逆境が、今日の主題である。

アメリカ大統領選挙の混乱に隠れてしまったが、まさにアメリカ大統領選挙が行われた先週11月3日、中国で前代未聞の事態が起こっていた。アリペイ(支付宝)などを担当するアリババの子会社で、世界最大のユニコーン(企業価値10億ドル以上の非上場企業)であるアント・ファイナンシャル(螞蟻集団)が、翌々日に控えた香港と上海市場における同時IPO(新規株式公開)を、中国当局によってストップさせられたのである。

これによって、370億ドル(約3兆8300億円)という史上最大規模の調達が吹っ飛んでしまった。

 

上場準備を整えていた香港証券取引所のスタッフたちはむろん、世界中の証券業界に衝撃が走った。普段は中国政府の「ヨイショ報道」ばかりさせられている上海衛視でさえ、「アントのIPOは中国当局が後押ししていたのに、直前になってハシゴを外すとは矛盾している」という専門家のコメントを放映していた。